川北英隆のブログ

7-9月期GDPは悪かった

7-9月期のGDP統計が公表され、実質は前期比1.2%(年率4.8%)の成長だった。事前の予想を大幅に超えた。問題は、名目成長率が前期比-0.1%と、依然として縮小気味なことである。
エコノミスト達が殺到する午前を避け、昼飯後に内閣府のホームページにアクセスしたら、アップロードされたファイルが見つからない(夜の8時頃までそうだった)。経済産業省の大臣が石油連盟との懇談会で大サービスして、事前に数値を喋った影響かとも思いつつも、「まあいいか」ということで、新聞情報だけで書いておく。それにしても、日本航空の経営情報といい、日本は30年くらい前に戻ったのか、それとも政治家に投資教育が足りないのか。何とかならないものか。
さて、実質ベースの成長率が意外に高かったのは、在庫調整(在庫の圧縮)が一巡したことと、設備投資が前期比1.6%も増加した影響が大きい。もっとも、この勢いが今後とも続くと考えることは難しい。両者がこれまで低下してきた反動、すなわち一時的な要素が強いと考えた方がいいだろう。今後は実力が試される。
気になるのは名目成長率がマイナスを続けていることである。企業業績にとって望ましくない。
とくに輸出において、実質は前期比6.4%増加しているのに、名目は0.3%の増加でしかないことに注目すべきである。実質と名目の差がここまで大きい需要項目は輸出だけである。需要が急速に回復してきた海外向けに、価格に目をつむって出荷しているのだろう。企業とすれば、何はともあれ設備の稼働率を上げることが重要なわけだ。
一方、輸入は、実質は前期比3.4%の増加、名目は5.1%の増加である。輸入物価が上昇していることになる。つまり、原材料価格が値上がりしているのに、それを加工した製品価格が大幅に値下がりしているという、日本にとって情けない状態が生じている。日本の輸出競争力が低下してしまった証拠だと考えられる。この最後の点について、後日にもう一度考えたい。
いずれにせよ、7-9月期のGDPは見かけはともかく、中身は悪かった。仮想の話しをすれば、経済産業大臣との懇談会で実質GDPの成長率を聞いた誰かが「すわ、株式は買い」と思って証券会社に注文したのなら、大きく目算が外れてしまっただろう。世の中、そういうものだ。

2009/11/16


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