川北英隆のブログ

信用格付機関の危機

今日の経済の最大のニュースは、S&Pがギリシャの格付けを一気に3段階引き下げ、投資不適格にしたことだ。ついでにポルトガルも2段階引き下げた。
記憶は10年以上前に遡る。1997年のアジア通貨危機の当時、格付機関はアジア諸国の格付を相次いで引き下げた。その結果、アジア通貨が暴落した。「危機の国ってどんなかな」ということで、有給休暇を取り、身近な韓国に旅行した。当時、韓国では円がすごい価値を持っていたこともある。大名旅行を楽しんだが、かといって韓国経済が混乱している様子はあまりなかった。
ギリシャの格下げに対し、ロイターのネットでは、バークレイズ・キャピタルのエコノミストが「ギリシャが緊急支援の発動を要請する前から(格下げは)明らかだった・・・単に市場に追従しているようにみられる」とコメントしている。この発言にはポジショントークの側面もある。とはいえ、直感的には、「何故、この時期に」と思ってしまう。アジア通貨危機のときと同じで、「格下げしておかないと後で恥をかく」という経営的な意識もあったはずだ。
一方で、格下げされたためにギリシャ国債の金利が上昇し、それがギリシャ政府の金利支払いを増大させ、さらに財政を悪化させてしまって危機を募らせるという、悪循環が生じうる。流行りのプロシクリカル性(景気循環などを増幅させる効果)である。つまるところ、格付機関の社会的な影響力がきわめて大きくなっていることを意味している。今回のS&Pの判断が、将来の格付機関規制強化論を刺激しなければいいがと祈るばかりだ。
ついでに日本の国債のことに関して。今日発信されたみずほ証券のレポートに「ナイフエッジを歩む債券市場」というのがあった。「金利のナイフエッジ」というコラムを今は無き日経金融新聞(2000年8月)に書き、今でもときどきそのコラムを冷やかされている私としては、「あれっ、これって題名の盗作?」と思った次第だが、まあそんなことは小さい問題、より大きな問題はギリシャではなく日本だと思いなおした次第である。

2010/04/28


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