川北英隆のブログ

SRI批判の本質

南アフリカ旅行の話題から少し離れ、閑話休題。旅行から帰ると一番疲れるのが新聞に目を通すことである。根が真面目だから(ホンマかいな)、溜まっていた新聞の全ページを繰る。そこで気づいたのがSRI(社会的責任投資)批判である。
SRI(Socially Responsible Investment)だが、最近ではESG(Environment、Social、Governance)に配慮した投資として、たんにRIと呼ばれることがある。PRI(Principles for Responsible Investment)という用語も生まれている。南アフリカのアパルトヘイト批判に代表される倫理的な側面からSRIが出発した歴史と、その出発点への嫌悪感に、最近の言い換えの原点があるようだ。
それはともかく、9/8の日経夕刊のコラム「十字路」に「社会的責任投資の試練」と題して、メキシコ湾におけるブリティシュ・ペトロリアムの原油掘削事故を引き合いに出し、「事前に同社の安全管理を問題視し、投資を避けた(SRI)ファンドがどれだけあったか」、「事件が起きて慌ててノーを言うなら・・・高い(運用)報酬を払う必要もない」と批判している。署名は「中萩」である。
もっともな批判のようだが、いくつか議論の余地がある。
1つは、コラムにも少しあるように、SRIファンドとは何なのか、玉石混淆なことである。玉からすれば石と一緒くたに批判されたくはないだろう。SRIの場合の石とは、時流に乗って名前だけSRIのふりをしているファンドである。
2つに、SRIに関する企業調査(CSR、Corporate Social Responsibilityの調査)とファンドのポートフォリオとは異なることである。ただし、これはファンド内部の事情、つまりファンドのガバナンスの問題だから、ここで議論しても仕方ない。
3つに、どのファンドも分散投資を基本にしていることである。高い投資収益の企業を事前に100%の確率で当てられないとの同様、CSR面の質の良くない企業を事前にすべて排除することはできない。
このコラムの最大の問題は、この3つめの点、すなわち分散投資を否定し、百発百中の投資を望んでいるかのような議論にある。百発百中を望むのなら、ファンドに投資すべきではない。
ついでに言うのなら、コラムには、SRIが「好成績に結びつくとの実証結果は・・・乏しい」と書かれている。これには、SRIの分散投資を前提とした投資パフォーマンスが高くなるとの分析を『総合分析 株式の長期投資』で行っているので、参考にしてもらいたい。最後はコマーシャルになってしまったが。

2010/09/12


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