川北英隆のブログ

日本株式会社の悩み

昨日と今日、2人の企業経営者とほぼ同じテーマで議論した。両社とも広い意味でエレクトロニクス関係の企業であり、特定の商品に関して世界的な競争力を有しており、著名である。
両社との議論の1つは、事業の選択と集中を行った場合、製造に直接関係する人員の整理はできるが、間接部門の整理が難しいというものだった。間接部門までドラスティックに切るアメリカ企業とは異なる。日本の場合、間接部門での無駄が残るので、企業業績の向上がドラスティックにならない。
日本国全体として見ると、間接部門の整理が進んだところで、整理された人員の行き場が問題となる。こういう言い方は好きではないが、ホワイトカラーがブルーカラーに移ることはなかなかないのではと思う。だから逆に、企業としてみれば、事業の選択と集中を行ったとしても、人情としても、間接部門にまでメスをいれることが難しい。
新しい事業を見つけ、そこに投資をし、既存の間接部門の人員を配置できればいいのだろうが、現存する間接部門の人員の年齢は50歳前後が多い。この年代の人員が、その新しい部門にどの程度適合するのだろうか。適合したとして、そのスピードはどうなのか。
このように、製造部門の人件費削減を進めたとしても、間接部門の問題が解決できないのなら、日本の製造業の競争力が回復するのには相当の時間が必要ということなる。コストの高い50歳代の人員がリタイアするまでの時間である。
もう1点は、日本で最先端の製品を開発する必要性である。海外の低い賃金で生産するのは汎用性の高いものに限定されるべきだ。この戦略の帰結は、企業の知名度が維持され、その企業に対する一種の畏敬の念が残ることにある。そうでなければ、アメリカと中国やインドが直接手をつなぎ、完全に日本が蚊帳の外になる。蚊帳の内の状態をいかに作り出していくのかが重要ということである。もちろん、蚊帳の内に入るには有用な技術人材が必要不可欠であり、そのための教育が必要となる。将来を見据えた、国としての戦略が求められている。
もう1点、企業はグローバルに展開しようとしている。では、グローバル展開できる力を有した企業とは何なのか。アメリカではベンチャーがたちまちグローバル企業に発展する。一方、日本では大企業に有能な人材が集中している。この日本の大企業の人材をいかに活用するのか。すでに日本の証券市場は、大企業を相対的に高く評価しているようだと分析できる。この市場の評価に背かない経営が企業に求められている。
最後に、グローバルに事業展開したとき、在庫管理を初めとする資産の効率的な活用に関して、これまでにない対応が必要となろう。グローバルな経営管理のノウハウをいかに養うのか、これも日本企業の課題である。

2011/02/24


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