川北英隆のブログ

大震災を不幸の始まりにするな

日経のネットによると(夕刊が手元に届いていない)、震災国債を発行し、日銀にも引き受けさせるという。政府には、今回の震災が積年の夢を実現させるチャンス到来と映ったのだろうか。
内閣府が月例経済報告で試算したところによると、震災による直接的な被害(社会資本、住宅、民間企業設備の毀損)は16?25兆円である。このうち民間企業設備は60%程度のようだ。残り40%は社会資本と住宅であり、この大部分は直接、間接的に政府の負担となるだろう。つまり、政府として10兆円程度を覚悟しなければならない。
これに間接的な被害がある。就業対策や社会保険もあるが、最大のものは原発の事故対応である。東電と、東電が原発に付けた保険である程度負担することになるが、それだけで賄えないのは目に見えている。電力会社を潰すわけにはいかないので、政府が補填することになる。
ということで、政府の負担が10兆円を超えるのは確実になってきた。さらに、電力供給量がネックとなり、3月に経済活動が10%程度落ち込んだ後の回復力にも限界がある。このため、税収が落ち込む。
以上の支出増と収入減から、政府の財布に下手をすれば20兆円程度の穴が開きかねない。それを賄うための方法に国債の増発と増税とがある。
国債の増発は、そうでなくとも政府財政に黄信号がともっているから、信用失墜のきっかけとなりかねない。とはいえ、それを日銀に引き受けさせるのは、タヌキ村だけに通じる木の葉の札の発行に似ている。一度その味をしめれば、後は「非常時」の御旗をかかげるだけで、財政再建なんて苦しみなしに、いくらでも資金調達できてしまう。
今回の復興対策資金の捻出は期間限定の臨時増税が正しい道だろう。街頭での寄附運動を政府が強制的に行うに等しい。奉加帳である。「日本は一丸」だし、「頑張れ」と声を合わせているわけだから、それに依然として1500兆円もの個人金融資産を有した「強い日本」がまだ健在なのだから、臨時的な増税だけで賄うように工夫するのが納得的だと思うのだが。
大震災は不幸の終わりであるべきで、不幸の泥沼の始まりであってはいけない。

2011/03/31


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