川北英隆のブログ

原発と猫の手配書

久し振りに(東京の)京橋界隈に出掛け、原発談義をして帰りがてら、例の骨董屋の前を通った。夕方なのに猫の姿がなく、いつもの食事と水がない。その代わりにドアに手配書が張ってあった。
まず、原発のこと。今まで不思議だったのが、予備電源をはじめとした設備が原発本体の建屋よりも海岸側に置かれていたことだ。この建物の配置が、今回の事故を大規模なものにした要因の1つである。今日、話しをした技術者によると、配置の基本設計は発注者、すなわち電力会社が行うそうだ。その基本的発想は、施設の玄関は美しくし、裏側すなわち表から見えない側に雑多な施設を置くことにあるそうだ。福島原発の場合、玄関は陸側だったので(道路の配置がそうだったから)、より津波の危険のある海側に予備電源などを入れる「小屋」が置かれることになったという。アホな話しである。
もう1つ、2010年の世界の発電量の統計によると、原子力よりも水力・風力・太陽光の発電量の方が多くなったという。これに対し、日本での風力・太陽光発電はあまり進んでいない。これは電力会社が熱心でないからであり、自分達が関与しない電力の購入にきわめて消極的だったからである。たとえば、風力の発電設備から既存の送電線までの設備は発電者の負担であり、さらに蓄電設備の設置も求められるという。要するに既得権益を背景とした嫌がらせというか、参入障壁をできるだけ高くしてきたことになる。政治的にも、原発の方が権益に広範にからみ、美味しいらしい。事実、そうだろう。一時、電力に関する制度を、発電と送電に分離すべきという議論が活発化した。今回の事件を受け、再度議論すべきテーマである。
そんな談義が終わり、そのことを反芻しながら、骨董屋の前で猫の手配書を発見した。名前はミー、忽然と姿を消したらしい。いつからなのか、情報はなかった(見落としたかもしれない)。原発周辺地域に置き去りにされた仲間を救いに行ったのかな。それとも、地震に怯え、広い天地を求めて逃げ出したのか。三毛猫のミーちゃん、雌だろうから、恋を求めてうろついているとは思えない。

2011/04/21


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