川北英隆のブログ

欧米の財政危機と市場

ある原稿を書かないといけないので、ギリシャ危機の再燃とアメリカ国債の格下げなどについて、いろいろと考えている。基本的認識は8/6に書いたとおりだが、しばらく目が離せないかも。
実のところ、2000年以降の10年間、欧米の株価はほとんど上昇していない。1990年代とは大きく異なる。ちなみに、日本は下落している。2008年のリーマンショックの影響も考えないといけないが、サブプライムローン問題が顕在化する以前の株価が出来過ぎだとすると、リーマンショックはそれを打ち消しただけかもしれない。
2000年からの10年間とは、新興国の存在感が増した時期に当たる。株価も、新興国は大きく上昇している。ということで、それまで投資の対象となりにくかった中国やインドに注目が集まった。
この動きを大局的に見ると、世界経済の中心が欧米から新興国へと移っているのかもしれない。とはいえ、新興国には不安材料が多い。
中国の究極の問題点は政治体制だろう。その政治体制が経済発展を支えてきたのだから、将来を見通すのは難しい。それに、もうすぐ労働人口がピークアウトし、経済発展にとって非常に大きな転換点になりうる。もっとも、その徴候が顕著になれば、中国の一人っ子政策が廃止される可能性もある。暮らしが豊かになった時点において、人口政策の転換が本当に効果をもたらすのかどうかは不明だが。
インドの問題点は身分制度と、隣国との紛争だろう。隣国との関係は力(すなわち資金量)が解決するとしても、身分制度という国内問題は経済に重くのしかかる。
ついでに、ブラジルはラテン系の民族であるので(ラテンの生き方と尊敬に値すると思っているので、決して蔑視しているわけでない)、まじめさが必要な経済発展が両立するのかという問題がある。ロシアは政治が非常に大きな問題だし、人口の減少問題もあるから、当面のところ、資源以外に大きな期待はできない。
要するに、新たな世界経済の姿が見えないのである。「あの国が主役だ」と思ったのに悪役だったりするわけだから、混乱する。これが現在の投資家の心理なのだろう。

2011/08/09


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