川北英隆のブログ

日本国債は安泰なのか

2011年を振り返ると、世界的な大事件はギリシャに端を発したユーロ危機・国家財政危機だった。ギリシャはともかく、スペインやイタリアにまで危機的状態が押し寄せた。では、日本は。
実は日本が財政赤字の観点からすると一番不安定である。しかし、日本経済が停滞し、輸出力があり、国民が何やかや言いながらも日本が一番いい国だと思っているから、資金が国内に滞留し、国債が消去法的に投資対象として選ばれてしまっている。だから、いまだに危機が到来しないし、欧米に危機が発生すると日本が買われる。その結果、日本はやはりいい国だと再評価されることになる。
この図式に変化が生じつつある。
日本の資金が日本に逃避し、閉じこもるから、円高が実力以上に進んだ。企業は生き残れなくなっている。企業自身が国内に閉じこもってきたから円高が進行した側面も否定できないから、ある意味で自業自得、(円高で損したくないから国内に閉じこもり、それが円高を呼びこみ、結局のところ輸出競争力を失って困ってしまったという意味で)合成の誤謬なのだが。
国内の限界を痛感したから、企業は生き残りのために海外進出を加速させている。円高のメリットを生かす観点からすると絶好のタイミングでもある。この流れは輸出を減らすだろうから、国内に自動的に資金が流入しなくなる。輸入も、これから原発が復活するにしても限定的だろうから、燃料輸入が増えざるをえない。
これらの結果、貿易収支の黒字が縮小し、赤字が基調となる。大震災以降、季節的要因を修正すれば貿易収支の赤字が続いているのは、赤字基調の予兆と言える。貿易収支は関係なく、経常収支さえ黒字であれば心配いらないという議論もあるが、投資収益の黒字を維持するには海外への資金流出つまり原資が必要となる。近い将来、資金の流れが大挙して外を向いたのなら、日本国債を支えていた鉄壁の守りの一角が崩れかねない。
このように考えると、現在の日本国債の安泰は、嵐の前の静けさのように思えるのだが。

2011/12/27


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