川北英隆のブログ

魚の骨に泪

春である。朝、新幹線で東京に出てくる途中、京都の北山や滋賀の比良には雪雲が懸かり、山は少し白かった。しかし、平地は時雨である。2月なら雪だったのにと思う。麦畑も青々し始めた。
そんな少し前、京都駅の新幹線ホームで舌に異常を感じた。実は一昨日の夜は焼き魚だった。大きな魚をネコのように食べるのが趣味なので、頭の部分もばりばり食べたのだが(眼の回りとかの身だけをせせるのが面倒なので、骨ごと噛み砕き、口の中で身を選り分けるだけだが)、その時、舌に骨が突き刺さった。適当にその刺さった骨を取り去ったはずだった。昨日は何も感じなかったし。
それが今朝になって、再び痛くなった。同じ場所だったので、刺さった骨が残っていたと直感した。仕方ないので指先で痛い部分をこすった。すると、すぐに痛みが引いた。よくわからなかったものの、痛みが引いたことからすると、やはり骨が残っていて、こすることで取り除けたのは確かなようだ。
以前、もう10年程前、身欠きニシンの骨が喉に刺さったことがある。この骨は細いので、ご飯を飲み込んだくらいではなかなか取れない。逆に、細いので極端には痛くなく、少し我慢すれば食事もできる。病院に行くのも面倒なので(近くに気の利いた医者のいない地域に住んでいたので)、放っておいた。これは2日程で自然に取れた。
刺さった骨は、無理に取らなくても自然と浮き上がり、何かの拍子に抜けるという体験談である。
骨ごと食べる白魚は春の魚。先日は明石に住む家内の友人がイカナゴを送ってきてくれた。また、芭蕉の句に「行く春や鳥啼き魚の目は涙」がある。「どじょっこだの、ふなっこだの」の歌も春。魚を感じるのは春か。その春にばりばり魚を食べたから復讐されたのか。魚の骨に泪する春分明けの早朝だった。

2012/03/21


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