川北英隆のブログ

東南アジア諸国の国情

一口に東南アジアといっても、それを1つの文化圏と見ることはできない。漠然とそうだろうと思っていたが、やはりインフラ、立地条件、国民の気質を含めた民族性で多様なようだ。
タイで聞いたところでは、インフラ面ではシンガポールを除いてタイが一番進んでいて、たとえば電力供給では日本よりも安定しているという。とくに大震災後はこの安定性が際立っているようだ。道路もアメリカがベトナム戦争時代に整備し、それをタイがそれをメインテナンスしているため、バンコク市内の渋滞を除けばきわめて良好だそうである。この点はベトナムとの大きな差だと評価されている。
インフラでの問題はやはり洪水のようだ。各企業とも昨年の経験から自衛策を施しているものの、保険の引き受け手が不在で、一般の損害保険でさえ料率が大幅にアップしているという。
地理的な立地においてタイは優れている。陸路を使えば簡単にベトナム経由で南シナ海に抜けられる。ミャンマー側の道路が整備されればベンガル湾経由でインドにも近い。
問題は政治的な不安定性と国民性にあるようだ。
政治の方は現在の国王(84歳)の後継者問題である。こればかりは国王が誰を継承者として指名するのかによる。国王の指名のない場合、国王が選んできた枢密院の決定による。
国民性は、タイの男性に野望がないこと、言い換えれば現状にあまり不満を持っていないことのようだ。国土が広く(国土面積は日本の1.36倍、人口7000万人)て平地が多く、さらに三期作が可能ため、農業をして田舎で暮らせばあくせくと働かなくても、また現金がそんなになくても十分生活できる(失業率は1%)。そんな環境の良さが国民性を作り出しているのだろう。だから油にまみれる仕事はタイでも3Kと思われていて、嫌われるらしい。このためもあり、教育水準は工学系が高くないとか。ただし、そうかといって工場で使えなくもなく、それなりに働いてくれるということのようだ。
ミャンマーとの比較では、ミャンマーの人材の質が高いとの評価だった。官僚のレベルも高いらしい。ベトナムがミャンマーに脅威と感じているとの評価もあった。今後、ミャンマーのインフラがどのくらい発展するのか、それによって東南アジアの勢力図が変化するだろう。
タイのもう1つの問題は少子高齢化のようだ。まだ人口は増えており、また移民に対して寛大なので、表面上、高齢化は目立たなかった(都市部だけを見たこともある)ものの、タイの出生率(女性1人が1.8人を出産)は日本より少し高い程度にまで落ちている。教育を受けた女性が結婚しないらしい。働きの鈍い男と一緒になると、彼を養う必要があるので、結婚願望が低いとのこと。「そらそうやな」と思った。

2012/03/30


トップへ戻る