川北英隆のブログ

東証上場制度の堕落

今日、山水電気が民事再生法の適用を申請した。これにより、1ヵ月後の5/3に上場廃止になるという。東証第1部の上場企業である。今時、誰がどの程度、山水電気の名を知っているだろうか。
ニュースか会社四季報などを見るといい。設立1947年、オーディオ分野でかつての著名企業である。しかしながら、今日の(上場廃止が決定する直前の)株価は1円、時価総額は13.6億円である。しかも、昨年12月31日時点での負債総額は約2億4765万円とか(日経新聞)。従業員は5人とある。ちっちゃい会社だ。
山水は、ステレオとかハイファイとか、そういう時代が終わった後、いつからかわからない前から延々と赤字をたれ流してきた(調べようとは思わない)。11年前に香港企業の出資を受け、延命を続けてきたが、その出資企業が経営破綻したため、山水の命も絶たれたというわけだ。
この山水の上場廃止で改めて思うのは(以前から山水の悲惨な状態は知っていたが)、「資本市場のシンボルとも言うべき証券市場の、それもメジャーリーグに相当する東証1部に、何でこんな企業が名前を連ねていたのか」である。以前、シルバー精工の上場廃止で書いたのと同じことだ。
東証は、市場のブランドもプライドも放棄したのか。いくら名門とはいえ、個人企業並みの規模まで落ちぶれた企業に上場資格を与え続けるなんて、というわけだ。「投資家を馬鹿にしている、腐りきった商品を堂々と棚に並べている、東証とはそんないい加減な、名前ばかりの老舗なんだ」と、事情を知らない海外投資家から思われかねない。
このように東証に企業家精神がないから、日本の上場企業からも企業家精神が薄れていく。これでは、全員揃って一等賞の、日本の馬鹿げた教育と同じである。国内ではそれで褒められるかもしれないが、海外では食われるばかりだ。
今日は新幹線中で原稿を書かないと終わらない程忙しかった。ブログを書く気力もなかった。しかし、山水のことを知って、急に気力が出てきた。「東証さん、ありがとう」かな。

2012/04/02


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