川北英隆のブログ

証券会社の現在の営業

昨日のブログで増資情報に関する伝統的な営業をアップしたところ、今日の朝刊、結局はかつての4大大手証券(ただし山一は消えた)すべてが同じ営業をやっていたとあった。では現在の代表的な営業は。
小さな年金基金や財団の資金運用に関わるとすぐに判明するのは、仕組債を保有しているケースが多いことだ。しかも、それらの仕組債に大きな損失が生じている。
仕組債とは、普通の債券に、為替レートや株価水準に関する一定の条件(トリガー)が付与されていて、そのトリガーに到達すると投資家側に不利益が生じるようになっている。その代わり、債券のクーポンは普通のものに比べて高い。
つまり、仕組債への投資家はオプションの売り手であり、オプションを引き受けた対価を、クーポンへの上乗せ金利として受け取る。このような仕組債が成立するのは、為替レートの下落や株価の下落による損失を予め防いでおきたいとのニーズが存在しているからだ。
気をつけないといけないのは、債券の満期期間が長期であるため、オプションも長期になる。このため、「予想しなかった」価格変動が生じる可能性は十分ある。
価格変動の可能性は十分に計算され、仕組債の契約条件に織り込まれている。さらに、そのような債券を仕組んだ証券会社には十二分な手数料が支払われる。このように考えると、仕組債が投資家にとって好都合な投資対象になっている可能性はきわめて小さい。仕組債への投資結果が好都合に終われば(トリガーに到達せず満期を迎えたのならば)、それはたまたま幸運だっただけにすぎないと思って間違いないだろう。
このような仕組債に大手の投資家が触手を動かすことは珍しいと考えていい。はっきり言って、大手投資家といえども、以前に一度はひどい目に遭ったことがあると思う。そんな経験から、「二度とダマされない」と誓を立てている。
だから、証券会社の営業は、個人を含めた小口の投資家、専門家がいない投資家、田舎の投資家へと向かう。ニュースによると、兵庫県朝来(あさご)市が、仕組債で損害を被ったのは証券会社の説明が不十分だったからだと訴えたとか(朝日新聞:兵庫県朝来市は6月21日、SMBC日興証券と三井住友銀行に約4億8千万円の損害賠償を求める訴訟を起こすことを決めた。・・・朝来市は2006-08年、市の基金を運用するため、利率などが米ドルや豪ドルと連動する仕組み債を・・・額面金額61億5千万円分を保有しているが・・・12億4千万円の含み損を抱えた)。
その訴訟の結果がどうなるのかはともかく、仕組債の営業には十分注意をするのがいい。いずれにせよ、「うまい話はない」。

2012/06/30


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