川北英隆のブログ

証券会社の伝統的な営業

インサイダー情報を故意に流したとして、某N証券が揺れている。業界トップだから目をつけられたのだろうか。他の証券会社も要注意である。監督官庁のスタンスが厳しくなったのだろう。
かつて、1980年代後半まで、インサイダー取引に関する規定はなかった。1988年に証券取引法が改正され、インサイダー取引が禁止され、罰則規定が設けられた。そういう意味では新しい規制である。
では、その規制以前はどうだったのかというと、「早耳情報」がもてもてだった。「明日の株価が知りたい」ということだろう。当時の増資情報は、現在とは逆に、その企業の力を象徴していた。このため、「増資は買い」だった。そんな増資情報を、あることないこと(とはいえ的中率は高かったと思う)、業界紙はこぞって書き立てていた。
当然、証券会社は増資情報をはじめ、いろんな噂を秘密のルートで仕入れ、上得意先の株式の発注担当者に耳打ちし、その評価を高めようと必死だった。
現在のインサイダー情報に関する事件を聞く度に、いまだ昔の商慣習が続いているのだと感心してしまう。伝統文化、国宝ものかもしれない。そういえば世界遺産の制度に「負の遺産」というのがある。それに登録できると言うと、言い過ぎかも。
知恵を出さずに、ずるいことをして相手を出し抜くことだけに努力する市場とは何か。衰退あるのみだと思う。新興国市場も、この日本の轍を踏まなければいいのだが。

2012/06/29


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