川北英隆のブログ

ガバナンスと機関投資家の役割

今日の日経を読んでいると、東大・岩原紳作教授が登場していた。15面である。複数の審議会や研究会で一緒だったと思うが、直接的な関係は多くない。とはいえ、少し寡黙でいて直接的であり、尊敬できる。
日経によると、「日本の機関投資家は、お金を出している人の利益を本当に考慮して投資判断をしているのか疑問を感じる」とある。まさに、そのとおりである。さらに、機関投資家が、経営者との対話や議決権行使によって、経営へ関与することを推奨しているようだ。
岩原さんが何を具体的に意図しているのかはわからない。しかし、現在の機関投資家の行動に疑問を抱いているのは確かなようだ。最近、審議会の委員の交代があり、岩原さんと顔を会わす機会がなくなった。できることなら、ブログ面で、次のように返答したいものだ。
まず、株主総会での議決権の行使は王道だが、日本企業の特殊性(これまでの会社法が役に立たなかったこと)からして、議決権行使に期待するのが正しいのかどうか。岩原さんがとりまとめた会社法の改正案はともかく、当面はそれ以外のガバナンスの方法を試さないといけない。その最大の方法は企業買収の容易化であろうと考えている。
次に、投資のプロであるべき機関投資家(アセットマネジメント会社、企業年金基金、企業年金基金へのコンサルタント会社)の経営に対するガバナンス問題が重要となる。つまり、AIJ事件に象徴されるように、企業年金基金が素人だとすると、それを取り巻くアセットマネジメント会社やコンサルタント会社の責任が重要となる。医者が患者に対して全責任を負うように、アセットマネジメント会社やコンサルタント会社の専門性と責任が問われる。残念なことに、現在の多くのアセットマネジメント会社やコンサルタント会社はぼやーとしている。この、ぼやーをいかに正すのか。これが、日本の証券市場にとっての大きな課題だろう。

2012/09/17


トップへ戻る