川北英隆のブログ

山陰本線に見る地方都市

大江山に行くには福知山経由でと書いた(10/15)。その福知山は山陰本線の主要駅で、大阪方面に向かう福知山線の始発駅でもある。元々丹後地方の中心都市だったわけだ。では現在はどうか。
鉄道オタクではないのでネットで確認しつつ書いておくと、京都と福知山間(正確にはその先の城之崎温泉まで)は電化されている。複線化は京都から園部までであり、園部から綾部までは単線、綾部から福知山が複線となっている。この園部から綾部までが単線であるため、京都から2時間かかる。京都からの距離は88キロなのにである。
沿線の駅には「園部から綾部までの複線化を」とのスローガンが掲げられているが、どうなることか。1時間に1本走っている普通電車の園部と綾部間は、座席の半分程度しか埋まっていない。福知山は丹波の中心であるものの、域外から人を集められていないからだ。しかも乗客のかなりは学生である。
福知山が栄えたのはもちろん盆地で稲作ができたからだが、主要産業は生糸だった。有名なのは綾部から出たグンゼ(郡是製糸)である。
しかし、生糸をはじめとする日本の繊維産業が衰退した現在、福知山から特徴が消え去ろうとしている。人口も減少し、老齢化が目立つ。観光資源としての大江山も、本物の鬼でも出ないかぎり大きな資源にならない。そうそう、明智光秀の居城が福知山にもあったとのことだが、やはりマイナーだろう。乗り換えまでに時間があったので福知山の駅前を少し見たが、これと言ったものを見つけることはできなかった。駅前の風景に特徴がないし、土産物もそうだ。
産業衰退、老齢化はどの地方都市にもほぼ共通している。産業に乏しいため、若者が仕事を見つけようと流出していく。この結果働き手が少なくなり、ますます産業が失われる。この悪い循環が各地で生じている。
福知山に戻ると、特徴が何なのかは外部者には分からないから、内部者が特徴をじっくりと考え、それを強調し、売り込む努力をしないといけない。東京をまねたところで、域外の住民は何も感動しないのである。たとえば、単線を単線のまま残し、のんびりした旅を楽しめるようにする、対向列車の待ち合わせ時間に特徴ある弁当や菓子を売る。そんな、今の不便を積極的に活用する発想があってもいいのではと思う。

2012/10/19


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