川北英隆のブログ

時代は変われど企業経営は

ベトナムのファンシーパンに登る途次、一人の、ある意味で有名人であるI氏と一緒になった。ノギスなどの精密計測器で世界的なメーカーであるM社(非上場企業)の従業員だったそうだ。
実はM社のことをある程度知っていた。株式アナリストをしていた頃、株式投資に関連して調査依頼があり、僕が担当した。もっとも、元の勤務会社が株式を取得したとの覚えはないし、調査に基づいて株式取得に消極的な意見を書いた記憶もない。途中で株式の取得依頼案件が立ち消えたのかもしれない。
また、アナリストの仕事から離れた後、労働省の玄関前で、M社の労働組合対応に関する抗議活動に出くわしたことがあった。「あの高技術の会社が何故、労働紛争なんやろ」と思った記憶がある。
今回出会ったI氏は、実はその労働紛争の渦中にいたことが判明した。I氏の話しによると、「転勤の辞令が出て、翌日から転勤先で仕事を始めるように」と言われたという。それが本当だとすると明らかにおかしい。I氏がその無理無体な命令に背いたところ、クビになったという。そこで弁護士に相談したところ、結局は労働紛争に発展したそうだ。地裁では勝訴したが、それから控訴が続いたのだろう、12年(そうI氏が言ったと記憶している)かかってようやく勝訴が確定したという。I氏に何故そのような理不尽な辞令が出たのかは聞けなかった。辞令の前に組合活動に熱心だったわけでもないし、特定の政治団体に属していたわけでもないらしい。
それを聞いてもう1つ、思い出したことがあった。2006年、そのM社が核開発に転用可能な測定器を無許可で輸出した事件である。その後にM社の経営が実質的に変わったか(法令違反はしないと変わったか)どうかは定かでない。とはいえ、2006年までは、法を完全に無視するような経営していたことは確かである。企業体質なのだろう。そもそもM社は仏教の理念に基づいて創業された企業である。何がその仏教の理念と異なった次元に経営を導いたのか、不思議だ。
いずれにせよ、社名を変え、経営者を変え、社是を変えたところで実態に何の変化もない企業は日常茶飯事に存在する。企業を評価する上で、歴史に注目すべき所以である。

2013/01/07


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