川北英隆のブログ

企業競争力と金子みすず

金子みすずはあまり好きでない。大震災後、「エイ・シー」の声とともに、これでもかと金子みすずが流れたせいもある。それでも「みんなちがって、みんないい」は経営の座右の銘となりうる。
日本企業が儲かっていない原因は、1つに、独自性がなく没個性だからだろう。むしろ、他社と同じことをしないと気がすまない。このため、流行ると思えば1つの分野に何社もが参入し、激烈な競争を行い、製品価格が急速に低下する。もしくは、どうでもいい機能を付加的に付けて気を引こうとする。その最たるものとして覚えているのは、ボールペンにデジタル時計を付けたものだった。「ええっ」と瞬間芸的には面白いが、それだけのことである。その「画期的製品」は見本品的に登場し、消え去ったと思う。もう1つの例は、前にも書いたように、大学周辺に牛丼屋が勢揃いしていることだ。
この現象を証券投資的にはハーディング(herding)という。下手なサッカーではボールのあるところに選手が群がる。行きつくところ、キーパーも参戦する。そのような現象である。結果は惨めなものだろう。
経営も同じだ。他社と同じことをするのならプロの経営者は不要である。しかし日本の場合、どうだろうか。「何でA社と同じ製品が出せないのだ」としょっちゅう怒鳴る経営者が日常茶飯事ではないだろうか。明治維新以降の物真似文化が、日本経済にすっかり根付いた結果かもしれない。
そうではなく、違うこと、違えることに意味がある。「みんなちがって、みんないい」は、そもそもは消極的な意味で「違うこと」を評価している。しかし、もっと積極的に「みんなちがえて、みんないい」になることも重要だろう。他人と違うことをしていて、そこに何らかの社会的意義があるのなら、素晴らしい結果が待っているように思う。
ついでに言えば教育や研究も同じである。違えることを教える、そういう授業をしたいものだし、研究こそ他者と違えなければ何の意味もない。

2013/01/10


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