川北英隆のブログ

「NY株はバブル」の驚嘆根拠

日経のネットを読んでいたら、NYダウの最高値更新はバブルだとの記事があった。記者が書いているものではなく経済ジャーナリストとかの肩書きだった。変な記事である。
http://www.nikkei.com/money/investment/stock.aspx?g=DGXNMSFK1200E_12032013000000&df=1 に記事がある。
それによると、バブルの根拠は2つあるらしい。1つは、アメリカの実質GDPが1991年から今まで70%しか増えていないのに、株価が5.8倍になったことだそうだ。もう1つは、PER(時価総額÷当期純利益)の水準は高くないものの、その背景に自己株式の取得があり、株価を安く見せているということだそうだ。
株価がバブルとの、この2つの論理は不適切である。
最初のGDPとの比較だが、名目GDPと比較すべきである。株価は名目値であるのだから。それなのに何故、実質GDPと比較しているのか。
また、1991年という比較時点の株価が適切な位置にあったことも確認しておかないといけない。その時点の株価が割安だったのなら、名目GDP成長率を株価の上昇率が上回ることは十分にありえる。逆に割高だったのなら、計算上、株価の成長率が小さくなることもありえて、「まだまだ株価は上がる」との評価になりかねない。
自己株式の買い入れが株価を割高に見せているとの論理からは、株価とは何なのかを理解していないことが透けて見える。株価は、正確にはそれに発行済み株式数を掛けた時価総額とは、今ある株式全体がいくらの価値なのかを表現している。過去に取得された自己株式という、いわば「死んだ子」の年は数えていない。
もう少し説明すると、自己株式を取得するため、企業は手元にある資金を流出させている。この分だけ企業の財産は減っている。株式時価総額とは、企業が今ある財産を用いてどれだけの価値を将来生み出せるのかという評価である。自己株式の取得の歴史は忘れていい。
PERから評価して「バブルの証拠は見当たらない」(バーナンキ)のなら、現在の株価はバブルとは言えない。もっとも、PERが上昇しつつあることからすると、投資家の気分が少し楽観の方に振れており、どこかで揺り戻しの可能性があるかとは思うが。

2013/03/13


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