川北英隆のブログ

日本でベンチャーは生まれるか

今日、某所の委員会でゲストを呼び、話を聞いた。いろいろと話題があったうちで興味深かったのは、「日本でベンチャー企業が生まれることに常に悲観的」との見方だった。
その理由は簡単、ベンチャー企業に投資する側が極めて保守的、すなわちベンチャー精神と対極にいるから(僕の意訳)。つまり、投資先のベンチャー企業が潰れると、保守的な上司や親会社から問い詰められ、責任を取れと言われる。この責任追求が嫌だから担当者も保守的となり、ベンチャー企業が育たないというか、育てられない。この理由はよく言われてきた。その現実を再確認させられたわけだ。
ベンチャー企業が成功する率は極めて小さい。だから投資先は多くないといけない。しかし、投資先を多くすると潰れる数が多くなる。このため、投資先のベンチャー企業数を絞り込もうとする。この絞り込みが逆効果をもたらしかねない。どうしても無難な先を選び、本来のベンチャーからは遠ざかる。この変なサイクルに陥るわけだ。
ベンチャー企業が育たないもう1つの理由は、これは僕の考えだが、日本の優秀な人材が大企業に集まることにある。現在の大企業は官僚的な組織になっているため、上司がリスクを取らない。このため、画期的な技術が社内に埋もれてしまい、ベンチャーが育たないのである。そもそも、優秀な人材が大企業に集まるのは、大企業の組織の外でベンチャー的な事業を起こすのが難しいからなのだが。
言い換えれば、今の日本は純粋培養のサラリーマン社会に近くなっている。サラリーマンとベンチャーは油と水である。そもそも大学に進学し、大企業や役所で働くのが大方の夢だなんて、寂しいものだ。そんな夢が実現したところで、エチオピアのロバの生活と大差ないのではと思う。時々抵抗するロバの方がまだましかも。言い過ぎか。
ベンチャー企業を起こす人材を支援するようにどこかで工夫し、日本社会の変な循環を断ち切らないといけない。そのための1つのアイデアは、都市に住み、大企業で働くことに高率の税を課すことかと思ったりする。この点は、またいずれ。

2013/04/02


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