川北英隆のブログ

新たな金融政策への寒気

今日、日銀が「大胆な金融政策」を公表した。研究室にデータ端末があり、市場の状況を刻々伝えている。講義から戻ると、その端末のグラフが一斉に上跳ねしていた。すぐに「そうか」と感じた。
3/30の続きとして書くと、今日の日銀の金融緩和は瞬間に座を盛り上げたわけだ。長期?超長期債を含む国債買い入による大量の資金供給、ETFやREITのさらなる買い入れが今日の主要な政策だろう。これにより、大量買い入れ対象となる国債価格の上昇(利回り低下)、円資金があふれることによる円安、円安とETF買い入れを好感した株高が瞬時に生じた。まさに一気飲みの状態、拍手が轟いたようだ。
この新たな日銀の金融政策は、日本の個人や金融機関が保有する資産価格をすべて上昇させ、非常に目出度いように映る。ちなみに僕の金融資産も増えた。とはいえ、これから本当に夢の世界に突入するのだろうかと疑わないといけない。
リスクはいろいろとある。
まず、今何故、株や土地を日銀が買わないといけないのか、納得できる理由がない。日銀主導によってバブル的状況を生み出しかねない。この点は3/30に書いた。
第二に、財政ファイナンスの可能性である。国の赤字を日銀が埋める、言い換えれば「紙切れ」である紙幣を日銀が無尽蔵に印刷し、それをヘリコプターで撒くようにして、年金を支払い、公共事業の代金を支払うことと等しいのではないか。この懸念である。第二次世界大戦の戦費を当時の日本政府が日銀から直接調達したのと同じ構図ではないのか。
第三に、アベノミクスに反対する者は日銀マンにあらず、日本国民にあらずとの風潮が極めて危うい。大政翼賛会を彷彿させる。今日の金融政策決定会合でも、反対意見が予想外に少なかった。どうも風潮に逆らえない雰囲気が漂っているような。反対するのなら、政策委員を辞める必要があるのかもしれない。
第四に、今日の政策の効果が切れた時に、次の新手があるのかどうか。日銀による資産買い入れ量を指数関数的に増やすしかないのではないかと思える。それとも、市場の自由度の剥奪、つまり日銀による金融機関への指導か。
ということで、これから保有すべき資産は海外資産だと思っていいだろう。
でも、海外資産が政府によって差し押さえられる可能性がある。とすれば、自由に持ち運びできる金の延べ棒が一番か。以上のような推論が完全なジョークだと断言できなくなった状況に寒気がする。

2013/04/04


トップへ戻る