川北英隆のブログ

官製の円安

黒田総裁の新金融政策が成功するのか否かにかかわらず、近い将来に金利が上昇するのなら、資金はどこに向かうのか。日銀が大量の資金を投入するのなら、その資金の流れに注目が集まる。
銀行が余った資金を日銀に預ければ、0.1%の金利が付与される。金利が上昇しかねない国債に投資するよりも、0.1%を確実に稼いだ方がましなように思える。しかし、銀行が日銀に大量の資金を大量させていると、「その資金を企業貸出に使わないの」と嫌味を言われるとか。銀行にとって居心地が悪いらしい。
これに符合するように、いくつかの情報が流れている。
1つは、年金積立金管理運用独立行政法人(役所的な長ーい名前なので、略してGPIFと呼ばれている)が資産運用の基本とするポートフォリオを見直すとか。現在、110兆円を超す資産のうち、70%近くを国内債券(そのほとんどは国債)で運用することとしているが、この比率は他の年金ファンドと比べて多い。ポートフォリオを見直すとすれば、この国内債券の比率の引き下げが議論の対象になるだろう。つまり、110兆円以上の資金が国債から、他の資産に振り向けられることに他ならない。
もう1つは、複数のルートから聞いたことだが、銀行を初めとする複数の機関に対して金融庁が、「海外投資が儲かる」、「これまで海外の株式の投資収益率が高かった」とコマーシャルしているとのこと。それなら、銀行の自己資本比率規制や保険会社のソルベンシーマージン比率(保険金の支払い能力)規制が何なのかの疑問が生じる。それは横において置くと、「もうちょっと海外に投資資金を振り向けていいのでは」と、金融庁が金融機関を誘導している。
黒田さんは日銀が外国債券を買うことに対して賛意を示していない。邪推するに、日銀による外債購入に反対することで政府の完全な忠犬であることをカムフラージュできるわけだから、ここに日銀としての意義を見出しうる。
以上の日銀としての思惑はともかく、政府の一連の動きは、日銀以外の政府の息のかかった資金を海外に流すことで為替を円安に誘導し、それによって物価上昇を生み出そうとしているように思えてならない。円安による物価上昇が本当に日本に幸せをもたらすのかどうかは大いに疑問があるものの、現実にはこれらの方向への強い力が働いているようだ。

2013/04/20


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