川北英隆のブログ

貿易統計8月

8月の貿易統計が公表された。それによれば、貿易による赤字額「輸出?輸入」の拡大はようやく止まった感があるものの、その縮小までは距離がある。というか、赤字が定着したのかもしれない。
財務省の公表数値によると、季節的な変動を除去した貿易による8月の赤字額「輸出?輸入」の金額は7913億円だった。6月が6432億円、7月が9111億円、この3月を均すと7819億円である。この「輸出?輸入」の金額の推移をざっと眺めていると、昨年末からの赤字額と大きな差がない。つまり、この1年近く、月間8000億円弱、年間ベースで10兆円近い赤字が続いている。名目GDPの約2%である。
しかも、現在の円ドル為替レートの水準は4月以降の平均値付近にある。輸出入の価格は、ほぼ現在と同等の為替レートを反映して決められている。とすれば、今後、この水準付近での円ドルレートが続いたとして、その要因に限れば、輸出入額に大きな影響をもたらさないと判断できる。後は、内外の景気動向、物価動向、企業の海外進出を含めた対応と、もう1つは原子力発電の再開動向次第で輸出入の金額が左右される。
以上を踏まえ、もっともありうる今後のシナリオを示しておくと、現時点程度の貿易赤字が続くことだろう。原子力発電の再開があるかもしれないが、その頃までには電力料金がすっかり上がっているわけだから、企業の海外進出も一層進んでいるだろう。このように考えると、貿易赤字金額の縮小は、証券会社の一般のエコノミスト(多くの場合、日本の株式や債券を買わせたいとのバイアスがかかっている)が考えているよりも難易度が高いと思う。

2013/09/19


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