川北英隆のブログ

仕組債に投資すべからず

友人が書いた本をゼミで使うために読んでいると、特殊なオプションに関して「業界スズメは、投資家のニーズではなく、むしろ投資銀行の利益目標にあわせて開発されているという」とある。
実のところ、この友人はトップクラスの米系投資銀行の、それもトップ近くにいたから、「業界スズメ」という表現は婉曲化というか、当時の仲間を少し気遣った表現だろうか。
で、ここから明らかなように、証券会社(日本ではこう位置づけられているが、アメリカ流に言うと投資銀行)がアレンジして提供している投資家向けの投資商品は、投資家のためのものというよりも、その証券会社の利益目標を達成するために開発されたと思ったほうが正しい。
もっと言えば、大手金融機関の子会社のアセットマネジメント会社が提供する投資信託も、すべてとは言わないまでも、多くがその類だと考え、投資家としてじっくりと投資すべきかどうか判断するのが正しい。別の表見を用いると、独立系のアセットマネジメント会社の方が(その投資能力はともかく、誠実性に関して)信頼できることが多い。AIJなどの詐欺的な会社は別だが。
それはともかく、証券会社が提供する仕組債は、それを仕組んだ証券会社(投資銀行)自身の大儲けというか、リスクなしでたんまり儲けられるように工夫された商品であることが多い。それに投資した投資家がどうなろうと「(大損はさせないものの、基本は)知ったこっちゃない」だろう。
たとえば日経平均の水準いかんで元本の返済金額が変動する投資商品、多くの場合は債券がある(日経平均連動債と呼ばれ、投資家からすると、「債券+日経225のオプションの売り」のポジションに賭けたことになっている)。たいていは日経平均が一定価格以下に下がると大損してしまう。
この商品・債券とは何なのか。一口で言うと、投資家が大損するか、多少の利益をえるかの商品である。多少の利益とは、債券としての利回りが普通よりも少し高いことだ。でも、その高い利回りは十分に投資銀行が計算した結果であり、確率的に投資家が得をすることはない。むしろ、投資銀行側が手数料を徴収する分だけ、投資家が損を被る可能性が高い。
そんな変な投資商品を買うのなら、普通の債券を買い、時期を見計らって日経225オプションを売買するほうがいい。日経225オプションはいつでも売買できるメリットがあるのに対し、仕組債に組み込まれているオプションは直接的に反対売買できない。このため、「流動性(売買できない)リスク」まで投資家が負担している。投資家にとって大きな損失だ。
ということで、そんな仕組債なんて買わないほうがいいし、そんな仕組債を大々的に推奨する証券会社やセールスマンは信頼度に乏しい。

2013/09/15


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