川北英隆のブログ

コンピュータを負かす株式投資

本日の日経新聞1面の特集欄に「ビッグデータ 投資を変える」とある。どこまで正しいのか。株式投資において人間の入り込む余地がなりなり、コンピュータに敗退してしまうのか。
コンピュータ技術が発達すると、ビッグデータを扱い、株価の特性を分析できるようになる。市場のムードが把握できる。ヒット商品の予想もできる。これらの結果として株式投資で大儲けできる。そんなことを夢見て、僕のゼミでも文字情報を分析して株価予測と結びつけようと考えている学生が複数名いる。
この手法で考えないといけないことがいくつかある。日経に書いてあった「注文データと株価の関係」に基づき、少し先の株価を予想する手法は、精緻なチャート分析と言える。しかし、この分析では株価の大きな流れは予想できない。この分析のベースとなる「注文」は、あくまでも人間であり、ムードに左右されている可能性がある。ムードが変われば株価の方向性が一変する。また、機械的な予測による注文が増えたり、その予測手法に新しい流れが生まれたりすると、過去の分析が当てはまらなくなるかもしれない。機械的に機械的な分析を適用してしまうと、想定外の損失を被りかねないわけだ。
ネットの文字情報からヒット商品を予測する手法にも留意点がある。まず、すべての商品(サービス)に適用できないことだ。ネットを使う世代と商品が重ならないといけない。また、僕自身がレストラン情報を見て感じることは、その評価に偏りがあることだ。これも、ネットで評価する世代の癖を反映しているのだろう。さらに、ネットに出てくるのは個人の目に触れる最終商品だけであるし、海外で売れているかどうかは「日本語の文字情報」では分析できない。
相場のムードを新聞情報などから得ようとの分析もある。この場合、文字情報になった時点で情報が古くなっている可能性がある。新聞が代表的である。また、ムードに追随しようというわけだから、どの時点でムードから離れて売買するのか(つまり反対売買するのか)のタイミングが、相場で儲けられるかどうかに大きな影響を与える。
以上のような(ヒット商品の予想を除き)短期的な売買は、結局はゼロサムゲームだと考えられる。もちろん、パチンコや競馬と同様、その世界に「名人」がいることを否定しないが、名人が多いほど、ゲームに負ける投資家が多くなることを十分意識しないといけない。
一方で、株式投資の本質はプラスサムゲームである(ゲームという言葉は不適切だが)。プラスサムゲームで儲けるには、どの企業がプラスサムになるのか、言い換えれば企業収益をきちんと計上するのかを判別しないといけない。この判別は細かな情報分析とは無関係に近く、大局的な判断が求められる。ということで、コンピュータの株価予測を羨む必要性は全くない。個人投資家が株式投資に楽しく参入できる可能性はまだまだ大きい。そう考える。

2013/10/13


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