川北英隆のブログ

群れる日本社会の罪

僕は音楽ファンでも何でもない。自然の奏でる音が最大の音楽だと思っている。それでも佐村河内守という名前は見たような。で、そこで生じた音楽偽装事件には「さもありなん」と笑ってしまった。
佐村河内守の名前を見たのは日経新聞だったと思う。それをとやかく言うつもりはまったくない。もっと前の段階でマスコミが取り上げ、絶賛していたのだろう。
日本人は何でもブランドで評価するようだ。ブランドというよりも、相場でいうハーディング(herding、群がること)現象が強いのだろう。欧米と比べ、日本の投資家の特徴はハーディングにある。それと同じことが食品でも生じた。産地偽装だ。今では名産地が乱立していて、何が何だかわからないし、京都と名前を付けるだけで野菜の値段が上がるというのもアホとしか思えない。
元に戻って、ハーディングの典型は下手なサッカーである。いつも講義でこの喩を使っている。ボールのあるところに下手な選手達が群がってダンゴになるわけだ。
日本で生じたハーディングの最たるものは、若い世代にはわからないだろうが、1973年のトイレットペーパー買いだめ事件だ。洗剤も買い占められたかな。値上がりする、無くなるというので主婦がスーパーへと必死に走って買い集めたため、本当にスーパーの棚から商品が消えてしまった。大学やホテルなどでは、トイレットペーパーを取られないようにしていた。
要するに、無くなると勘違いしたから、自己実現的に商品がスーパーから消え、ホテルからも消えた。その顛末は、買い集めたトイレットペーパーを何年もかけて消費したことだ。一度に使うとトイレが詰まってしまうし。
ついでに言うと、現在の最大のハーディングは日本国債買い占め事件かもしれない。何て、半分冗談だが。
それでさらに元に戻って、この音楽偽装事件とは何だったのか。日本人の好きな「お涙頂戴」「良い子ぶりっ子」が高じたものか。ニュースを少しチェックすると、有名になった「交響曲第一番 HIROSHIMA」は、そもそもお蔵入りになりかけた曲のタイトルを変えたものだとか、本人に被爆のことは意識がなかったとか、耳が聞こえていたとか、もう、はちゃめちゃである。
でもと思う。この僕の聞いたことのない「交響曲第一番」、今聞いて本当に素晴らしいのなら、それはそれでいいのではないのと。また、本当の作者を絶賛すべきだとも。これらにさえ該当しないのなら、それは絶賛した者達の大いなる罪でもある。

2014/02/06


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