川北英隆のブログ

地方にとって新幹線は凶か吉か

今回、北陸に行って新幹線を強く感じた。金沢から東に新幹線がほぼ完成している。泊のタクシーの運転手も新幹線のことを話した。しかし、富山県の駅は、黒部、富山、高岡だけである。
親不知の駅からタクシーを呼ぶにしろ、小川温泉や北又からタクシーを使うにしろ、いずれも泊からとなる。泊は富山平野の東の端、親不知の入口・出口にあたり、交通の要衝だったのだろう。しかし、新幹線が開通すると、泊は完全に素通りである。
現在、北又への交通手段を黒部駅(正式名称は黒部宇奈月温泉)が準備しているという。新幹線の開通によって東京からの登山客が増えると期待されているものの、その恩恵が現在の玄関である泊には及ばない。
今でも泊は過疎が目立っていた。駅前でビールを買ったのだが、本当に田舎の商店だった。かつては立派な店だったのだろうと思えるのだが。これが、新幹線の開通でいい方向に変わるとは思えない。駅前にあるタクシーの営業所も、かなりの確率で泊から離れるように思える。
これと完全に同じではないが、親不知の駅前(歌という町)も無残だった。かつては名勝であり、天下の険だったはずなのに、現在は高速道路が海にはみ出している。その橋桁が海にできたため、潮の流れが変わり、親不知にあった砂浜が消えたとネットに書かれている。確かに波が押し寄せる合間に親不知、子不知の難関(街道)を歩こうとすると、そこに砂浜がないといけない。現在は砂浜が消えたため、かつての街道も消えている。その代わりに、名勝に似つかわしくない高速道路が、人の歩行を妨げて海岸で威張っている。人不知とでも称すべきか。
思い出したのは日本橋である。東京に出てきた当初、「お江戸日本橋」と歌われた橋を見に行った。これは誰もが知っているとおり、「これが東京の象徴か」と皮肉か自虐を込めて本気で思うくらいに無残である。それと同じくらい、むしろそれ以上に北陸の象徴である親不知も無残である。新幹線が、この無残さの上塗りをしないように祈ってしまうばかりだ。

2014/09/25


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