川北英隆のブログ

タカタのエアバッグ問題と開示

タカタのエアバッグの欠陥とリコール問題が大事件に発展した。タカタはエアバッグで世界第2位の企業、2014年3月期の売上高は5570億円、もはや中小企業ではない。その企業に何が。
昨日、さるところで企業の評価に関して議論していたところ、タカタが話題になった。新聞では読んでいたものの、僕の投資先でもないし、一番影響を受けているホンダとも僕は関係ないし、読み流していた。
昨日の議論で注目したのは、エアバッグの欠陥に関して最新の有価証券報告書(通年)に記載がないとのことと、実質的なオーナーである会長が表舞台にほとんど登場していないとのことだった。
会長の問題は簡単で、2代目である。創業者は3年前だか前に亡くなっている。タカタの株式はオーナー一族と、多分ファミリーオフィス的な存在なのだろう、そもそもの発祥である高田工場(その後の旧タカタ、2004年に組織編成)を英字に代えた「TKJ株式会社」が52%を保有している。そんな現オーナーが表舞台に登場しなかったのは、社内で絶大な権限を有していたことと、対外的にはお坊ちゃまだったことがあるのではないか。対応が完全に後手に回っているのは、実質トップに由来する経営的な欠陥を示していると思ってほぼ間違いないだろう。
有価証券報告書の問題については実物を見てみた。「事業の状況」の中に「事業等のリスク」が記載されているのだが、2014年3月期には「製品の欠陥について」「法的手続きについて」には具体的な記載がない。ただし、2014年3月期の監査報告書を見ると、「監査意見」は適正としたうえで、「強調事項」として次のように述べられている。
すなわち、「重要な後発事象に記載されているとおり、会社の米国子会社が過去に製造したエアバック製品の一部に不具合があったことに関連し、客先において平成25年4月に市場回収処置が行われたことから、本件に係る会社の負担見込額を製品保証引当金として計上しているが、新たに平成26年6月に追加市場回収処置が公表されている。これに伴い会社グループに損失が発生することが想定されるが、現時点では会社負担額を合理的に見積もることは困難なため、連結財務諸表に与える影響は明らかではない」と。
この「強調事項」にもあるように、タカタのエアバッグの欠陥は前年から大きな問題となっており、2013年3月期に300億円の製品保証引当金を追加で積んでいる。そして2014年3月期に大きな「続き」が起こったわけだ。ちなみに、欠陥の原因は2013年分と同じである。
やはり経営としての対応が遅かったと言わざるをえない。また、内部監査、外部監査が適切だったのかどうかも問う必要があるだろう。

2014/12/19


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