川北英隆のブログ

イエメンからの脱出記

いろいろと忙しく、いろんな人に失礼している。しかも、書いた気になっていたイエメン脱出記が猫の巻(1/19)で終わっていた。実はその美人猫と遊んだ後、悪夢のような脱出劇があった。
イエメン本土のムッカラ空港に着いたはいいのだが、ムッカラから行きに使ったUAEの飛行場、シャルジャへ戻る便がなかなか来ない。
聞くところによるとイエメンの航空会社(Felix Airways)の機材が1機壊れたため、限られた飛行機をフルに使おうとしているとのこと。シャルジャへの便の機材は、実はソコトラ島からムッカラに飛んだのと同じ機材らしく、それがムッカラから首都サヌアに行き、中継貿易港で有名なアデンを経由して、ムッカラに戻ってくるとのことだった。「道理で」と思ったのは、今回の旅行でUAEのシャルジャからソコトラへの便が当初の予定時刻よりも大幅に早い未明の出発に変更されたことである。これも機材をフルに使って路線を維持しようという方策だったようだ。
Felix Airwaysの機内誌によると、便は正確に運行されるので、便の遅れによる損失には一切応じないと書いてある。記念に、その機内誌を持って帰った。
それはともかく、飛行機は夜9時にムッカラに戻ったものの、シャルジャに向かって飛んだのは真夜中近かった。狭い機内で長く待たされたせいで、疲れて眠っているうちに明るいUAEの都市が見えてきた。しかし、どうもシャルジャやドバイではないような気がしていると、違う飛行場に着陸するとの機内放送があった。ペルシャ湾岸は濃霧のために着陸できないので、UAEのうちで湾の外側にあるフジャイラに着陸したらしい。シャルジャに着いていれば、何とか予定していた帰りの便に乗れたのだが、シャルジャからかなり離れたフジャイラなら万事休すである。
UAEはアラビア半島の中で禁酒に関して緩い(ソコトラ島もそうで、キャンプで飲んでいると現地人がコップを持ってやってきた)。やけ酒というわけでもないが、免税店でウィスキーを買い、待合場でそれをアルミのボトルに移し替え、お茶を飲むふりをして何人かと飲んでいた。
夜が明け、フジャイラへは航空会社がバスで連れて行ってくれることになった。砂漠の山越えであるが、素晴らしい道路が続き、立派な家が立ち並んでいる。遅延の代償がこのバス旅行だったというわけだ。
シャルジャでは臨時にホテルに泊り、旅行会社が帰りの便を手配してくれるのを待った。結果はというと、シャルジャからドーハに戻るものの、ドーハから日本への直行便は確保できず、香港経由で東京もしくは大阪に戻ることになった。Felix Airwaysからのリファンドもなく、シャルジャのホテル代と帰りのチケットの追加請求が発生するという、えらく痛い旅行となったが、無事にイエメンから脱出できただけでも感謝かなと正直なところ思っている。
結局、日本に戻ったのは2日遅れ、正確には1.5日遅れだった。早朝の関空から家に戻り、すぐさま講義のために大学に行くはめになった。それと、海外旅行保険には入っていたのだが、遅延保険に入っていなかったため、アメックスに付帯している「遅延による食事代・ホテル代の保険」だけが下りることになりそうだ。これでは大損害である。「イエメンのような国に行くには、遅延保険は損しない」との教訓を得た。

2015/02/07


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