川北英隆のブログ

日本企業には独自性が必要

今年も農林中央金庫からの寄附による講義が始まっている。正確には農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)からの寄附である。今週は小林製薬の小林会長に講義をしてもらった。面白かった。
今年のラインアップは、4/23に書いたように、クボタ、リンナイ、京都銀行、小林製薬、MonotaRo、大阪取引所、京セラ、フィデリティ投信である。このうちリンナイ、京都銀行はカナリア諸島行きでサボった。後で録音したものを聞くつもりでいる。
それで小林製薬である。「小林製薬って、何や、どんなんや」と思う向きも多いだろう。そこで、ブルーレット、熱冷まシートの会社と言えば、「ああっ」と理解されるに違いない。小林製薬としては「それでいい」らしい。「商品名を知ってもらってれば、ままいいか」というのが本音かもしれないが。
小林製薬に登壇してもらいたいというのはNVICの希望であり、僕自身は小林製薬を知らなかった。道修町にある老舗(1886年創業)の会社である。
最初は薬の卸売から出発し、製造に進出したとのこと。そのうち、トイレタリー商品に花王やライオンなどの大手が進出していないことに目をつけ、そのトイレタリー部門に進出した。この背景には、「小さな池の大きな魚」を目指す、すなわちニッチ領域でのナンバーワンという経営方針がある。
しかも最後に(2008年に)卸売部門を売却してしまった。創業家一族の会長に言わせると、「製造と卸売を一緒にやっていると思考回路が混乱するから」。
人真似をしない経営、しかも時代の変化を読んで事業内容を変革していく経営は素晴らしい。人真似をしないこと、変革することはリスクを取ることに近い。決断力が求められよう。創業家の経営者だからできたのかもしれない。
このうち、人真似をしない点は多くの日本企業に不足している。人真似を嫌い、独自性を重んじるのは京都企業に多い特徴だと『京都企業が世界を変える』に書いた。そんな企業が大阪にあったのも驚きである。
そこで思うのだが、かつての日本企業には人真似をしないという矜持があったのかもしれない。それがいつしかサラリーマン社長になり、リスクを取らず、誰かの尻を追いかける経営に終始するようになり、低利益率に陥った。このように考えさせられる講義だった。

2015/06/13


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