川北英隆のブログ

ソニーの増資は是か非か

先月30日、ソニーが新株を発行し、最大4400億円を資金調達すると発表した。これを受け、株価は3700円台から3400円台へと急落、新聞では「1株当たり価値が薄まるから」と株価を説明していた。本当か。
素人というか読者を簡単に「そうか」と納得させる説明方法が「薄まる」すなわち価値の希薄化である。でも、今の株価と同じ価値の現金がソニーに入るのだから、希薄化という説明は変だと思えてしまう。3700円の株価に対して、株数が10%相当増える増資であろうが、100%増えようが、3700円相当の現金が入ってくる。40度の風呂の湯に40度の湯をいくら追加で注いだとしても、湯はぬるくならないのと同じ理屈ではないのか。
この増資の是非を評価し、説明するのは難しい。ソニーに新たに入る4400億円をそっくりそのまま配当に回してもらえれば、投資家として何の問題もない。
しかし、ソニーがそれを事業に使おうとして、時に問題が生じる。その資金が「株式投資家が期待するだけの利益を生み出すのかどうか」が問われないといけない。新規事業が銀行の要求する金利以上の利益を稼げないのなら失敗なのと一緒で、新規事業が株式投資家の期待以上の利益を稼げないのなら、やはり失敗である。その結果、株価は下落する。
今回のソニーの増資に対する投資家の反応(ソニー株の売り)は、この投資家の懸念を先取りしたものである。
本当に増資によって得た資金を上手に使えないのかどうかは、これから見極める必要がある。今回の株価下落はソニーの前科、すなわち「資金の無駄遣いばっかしや」との評価に基づくものでしかない。
ソニーの経営者としては、たまたま株価が上がっていて環境が良いのでまずは資金を集めただけではなく(こうは説明しないだろうが、もしかしてこの推測が大当たりかもしれないので)、今回は一味も二味も違うのだということを投資家に対して実績で証明しなければならない。なかなか厳しい要求だろうが。

2015/07/01


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