川北英隆のブログ

京都企業のどこが儲かる要因か

京都企業(製造業)の株式投資が儲かることがわかった。では、その要因は何なのか。この点がはっきりしないことには安心して長期投資ができない。そこで、その要因と考えられる点を指摘しておく。
実のところ、ここで指摘する要因は『京都企業が世界を変える』(金融財政事情、2015年)に書いたことと同じである。「その執筆時に指摘した要因を、分析対象年度が2年分増えたので、再度検証した」と書くのが正しいだろう。
なお、以下に示す数値は2015年度のものである。
京都企業(製造業)の特徴の1つは、事情を知れば知るほど京都企業らしいと感じるのだが、海外での売上高(輸出を含む)が66.6%、すなわち2/3に達していることである。京都企業を除く製造業が54.3%である。『京都企業が世界を変える』の繰り返しだが、京都企業の目線は日本を超えて世界にある。京都にとって田舎であるのに、形(企業規模や過去の実績)からしか入らない東京は相手にしていない。この精神が多くの京都企業をグローバル企業にしたのである。
この世界的な展開は売上高の成長率も高くしている。2001年度以降の売上高成長率は、京都企業(製造業)が年率4.0%、京都企業を除く製造業が2.9%である。
もう1つの特徴は、売上高営業利益率が高い、すなわち1円の売上がもたらす利益が大きいことである。京都の物真似を嫌う精神が独自の製品を生み出した。競争が少ないから、利益率が高いのである。京都企業の平均な売上高営業利益率は10.2%である。京都企業を除く製造業が6.4%だから、差は歴然としている。
以上が京都企業(製造業)の優位性の主要な要因なのだが、もう1つ特徴がある。それは自己資本比率の高さである。京都企業の株主資本比率は71.5%に達する。京都企業を除く製造業は41.8%である。
京都企業には鉄鋼や化学などの重厚長大企業がない。これが株主資本比率を高くしている背景の1つなのだが、もう1つ、必要な時に手元に現金があることを好んでいる点も指摘すべきだろう。ベンチャー企業として発展した時代がまだ頭の片隅にある。また、M&Aに機動的に対応したいとの経営意欲も高い。
この自己資本比率の高さはROE(株主資本利益率)の分母を大きくし、ROEを低下させてしまう。実際、京都企業のROEは7.5%であり、京都企業を除く製造業の7.9%と比べるとほぼ同じか少し低い。ROEが低いことは当面の株価にはマイナスなのだが、リーマンショックのような事態が発生すると経営に安定性をもたらし、プラスに働く。
京都企業は独自の経営方針でもって自己資本比率を高くしている。このことに対して画一的に「株主資本比率を低くしないとROEが高くならない・・」なんて批判すると、またまた「ほんま田舎もんやなあ、ええ薬あげまひょか」と横を向かれるだけだろう。

2016/10/12


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