川北英隆のブログ

トランプの頭脳構造はコンゴ的か

アメリカ次期大統領のトランプ氏は主要な企業に対して「アメリカから海外に工場を移すのなら、それに対して追加課税する」と豪語している。実現性と真意はともかく、それを本気で考えているのなら、コンゴ並みの発想だと思ってしまう。
コンゴでは何かにつけて「手数料」というか賄賂というかお目こぼし料が要求される。至るところで(やってもらいたくもない)サービス料が請求される。結果として、今回一緒に旅行した6人は、「もう二度とコンゴに来ることはないよね」ということになった。全員がワイルド大好き、通常のツアーではなく、手配旅行でもOKというにもかかわらず、である。
思うに、コンゴに来た旅行者にサービス料金を強要するとか、お目こぼし料を要求することは、要求する本人にとってはとりあえずの利益となる。しかし、それがコンゴ全域に蔓延することで、誰もそんな国に旅行しようとは思わなくなる。海外からの金が入って来なくなる。この結果、長期的にはコンゴ全体の不利益となる。
現時点でのコンゴの行動は、部分的な(もしくは個人の短期的な)最適化を目指しているに等しい。視野を広くして評価すれば、最適な行動とは決して言えない。長期的に考えて、もっと儲かる方法がいくらでもあるから。
現在のアメリカは世界の中で唯一、安心して投資できる国である。しかし、トランプが経済活動に対して政治的に介入すれば、この安心感が薄れる。アメリカへの投資リスクが高くなるとも言える。まだアメリカに進出していない企業が、新たなアメリカへの投資を躊躇する。
さらに、アメリカ企業が、アメリカに工場を作ることが望ましいのだろうか。ちょっとした技術さえあれば誰でも、どこでも作れる製品(自動車やエアコン)を、アメリカの(他国に比べて相対的に)優秀な人材を使って作ることに、どこに喜びがあるのか。それよりも、もっと高度な生産活動(たとえばIT関連の技術の実現)を目指すことで、より高い利益と喜びが得られるはずである。企業の最適な経済活動とは、こういうものである。
もちろん、この企業活動の結果、落ちこぼれる人達が生じるのも事実である。しかし、この対応のために国家がある。福祉政策である。福祉に必要な資金は税金で調達すればいい。この国家の活動を無視して、企業が、生産活動とともに福祉活動もしなければならないという論理は、きわめて不適切、二兎を追うに等しい。コンゴと同様、部分的な最適化でしかない。
これまでのトランプの発言を聞くかぎり、発想はコンゴ的である。ワイルドだが(これまでのどの大統領にもない激しさはあるが)、目指しているのはスマートとはほど遠い、コンゴ的な、その場限りの思い付きだとしか思えない。

2017/01/12


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