川北英隆のブログ

日本の大企業の現実は哀れ

今日の日経新聞の某ニュースは衝撃的というか、「やっぱりね」というか、日本企業の構造的問題を如実に表現していた。3面、「東芝半導体 日本応札ゼロ」という記事である。
東芝の優良部門がバーゲンセール中である。その中でも目玉なのが半導体メモリー部門だろう。その応札が3月29日に締め切られた。海外からの応札がいくつもあったらしいのだが、日本からはゼロだという。イギリスの金融業的に国内に工場を持ってきてくれるのなら、日本の企業が青い目でも黒い目でもいいというのが僕のスタンスである。とはいうものの、応札段階で日本がゼロというのはいかにも寂しい。というか、まさに日本企業の、とくに電機業界の衰退を象徴していると思える。
今回は2兆円規模の買収になる。それだけの資金をどうするのか。規模的に大きければ、何社かが一緒になって応札する方法もある。日本にもそのくらいの財力があって当然だろう。技術力はある。それなのに、誰もいないとは、半分は予想していたものの、現実に直面して驚いてしまった。
確かに、「では、誰に期待していたのや」と言われると、適切に答えられない。この現実の背景にはいくつか理由があるだろう。
1つは、2兆円規模の資金は日本企業単独として限界に近い。時価総額で2兆円以上の日本企業、それも半導体に関係する企業は幅広く考えても、時価総額の順番に、通信3社、キーエンス等の電子部品企業、ファナック、キヤノン、ソニー、三菱電機、パナソニック、日立、東京エレクトロンしかない。トヨタを初めとする自動車関連も挙げておくべきか。
総合的に考えて、三菱電機、パナソニック、日立程度が有力候補だろうが、3社は半導体から撤退したか、距離をおいている企業である。通信3社の中で決断力と展開力からするとソフトバンクだろうが、英国の会社を買ってしまった。キヤノンは東芝の医療機器部門を買っている。部品メーカーが一気に半導体というのも無理があるし、自動車会社自身はシステムとしての運転に力が入っている。このように考えると日本企業に候補がいない。
2つに、2兆円もの大規模ファンドを組成する力も文化も日本にはない。リストをとってでも長期的に大きく儲けようとの資金が国内にはほとんどないのが実態である。数十億円規模の民間ファンドの組成も容易でないと聞いている。
日本の特徴は次の点にある。個人(個人主導の組織)に超の付く大金持ちがほとんどいないため、大胆に投資して大儲けを狙う資金がない(ソフトバンクは稀有な例である)。企業に資金はあるのだが、サラリーマンで固められていて、投資資金が簡単に出てこない。とくに大企業は疲弊し、しかもサラリーマンが社長だから、官僚的に動く(大胆な行動なんて許されない)。
今、一番大胆なのは公的機関かもしれない。とはいえ、彼らにどの程度の技術的、経営的ノウハウがあるのか。
という日本の現実の厳しさというか、哀れさというか、つまらなささを垣間見てしまった。

2017/04/05


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