川北英隆のブログ

ソフトバンクの親子上場と株価

ソフトバンク(上場しているのはソフトバンクグループ)が子会社の国内携帯電話会社、ソフトバンクの上場(3割程度の持ち分売却)を検討していると報道された。検討が本当かどうかは知らない。この親子上場に関して、事実関係、理論的な評価だけを書いておく。
客観的な評価以上に踏み込んで書くのは、諸般の事情から差し控えておきたい。
子会社株式を上場する(上場にともない、持ち分の一部を売却する)ことによって、親会社というか持ち株会社であるソフトバンクグループの株価は上がるのか、下がるのか。
上場企業している合理的に経営されているのなら、また投資家がその上場企業を合理的に評価して売買しているのなら、事業の一部を形成している傘下企業を売却しても、株価に影響はない。傘下企業の持ち分の代わりに、同等の価値のある現金が入手できるだけである。
現実はというと、昨日の東京市場でソフトバンクグループの株価が上昇した。前週末比、3.2%の上昇だった。
理論と異なった株価形成の理由として、次の要因が考えられる。
第一に、投資家が理論を知らずに誤った判断をした可能性である。つまり、(市場で評価されているよりも)高値で事業の一部を売り、現金を入手することで「ソフトバンクグループ儲かる」と勘違いした。
第二に、国内携帯電話市場が飽和状態にあるから、ソフトバンクグループがその市場から(一部分とはいえ)撤退することが、不採算事業からの撤退的な意味を持つと投資家が判断し、それを好感したのかもしれない。この要因が真実なら、携帯事業子会社であるソフトバンクが上場されたとしても、その株式に多くを期待できないことになる。
この第二の点ついては、別の解釈が可能である。ソフトバンクグループが、携帯事業子会社であるソフトバンを高値で売り抜けることを試みているとの解釈である。これは、ある上場企業の増資が、その企業の売り材料になること、逆に、自己株式取得(増資とは逆に減資的な行動)が、その企業の買い材料になることと同じ意味である。
しかし、繰り返せば、ソフトバンクグループの株価は上昇した。これは、増資と子会社上場の類似性について、投資家が十分理解していないのかもしれない。もしくは、新たに上場される子会社の株式に飛びつく合理的でない投資家(多くは個人投資家?)が出てくると、今の多くの投資家が期待しているのかもしれない。後者に関して、新たに上場しようとする子会社のガバナンスの問題(親会社以外の投資家の意思が、たとえば配当などに十分反映されるのかどうかという問題)もあるが、この点は議論しないでおく。
いずれにしても、第一の点と第二の点は、合理的でない投資家の存在を前提としている。
第三に、ソフトバンクグループが子会社株式の一部売却により、借入過多の状況から脱却することで、新たな成長分野への投資の自由度を得ると投資家が判断し、それを好感したのかもしれない。
理論的には、もしもソフトバンクグループが倒産間際の状態にあるのなら、増資的な行動は投資家に不利であり、株価形成上、好感されない。現実には倒産間際の状況ではなく、単純に借入過多なだけだから、好感される可能性は十分ある。
とはいえ、一部売却する事業が有望な事業であれば、判断は複雑になる。今回、国内携帯事業の上場すなわち一部売却を投資家が単純に好感したということは、やはり国内携帯事業を成熟市場とみなした(少なくとも成長産業だとみなさなかった)証拠だろう。
いずれにしろ、投資家として、冷静にソフトバンクグループの行動を評価する必要性が高い。

2018/01/16


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