川北英隆のブログ

働き方改革の道遠し

知り合いの教員がアメリカでの1年間のサバティカル(研究休暇制度)から復帰した。彼女の夫は別の組織で勤務しているのだが、やはり長期休暇制度を利用してアメリカに同行していた。この夫に問題が生じたようだ。
問題が判明した発端は、彼女の夫が教員のようなヤクザな職業ではなく、堅気のサラリーマンなので、「うまく復帰できたの」と質問したことにある。返事が来た。うまく(働くことにギャップを感じずに)復帰できたかどうかは書かれていなかった。
返事にあったのは、「昇格が2年分遅れるらしい」との情報だった。昇格が何を意味するのか不明ながら(詳しくは質問していない)、給与テーブルでの「○○職何級何号」というものかと理解している。
休んだのは1年間だけなのに、何故2年分昇格が遅れるのか。男が育児休暇のようなものを取得すると、やはり「倍返し」になるのか。女性の出産や育児休暇もそうなのか。そうだとすれば、罰則付きの長期休暇制度となり、意味がない。
また、男女で制度運営に差があるのなら、それは逆差別である。裏返せば「男は休まずにちゃんと働く奴」「女は休む奴(だから男よりも劣る)」との、昔ながらの意識から抜けきれていないと断定できる。
さらに情報がある。「知り合いがアメリカにいるうちに一度訪問しよう」というので、教員かつ定年退職しているというますますヤクザな地位を利用し、僕自身、この3月に知り合い宅を訪問していたからである。
そこで彼女の夫の世話になり、話をする機会がった(当然だが)。わかったことは、夫が真面目な性格であること、だから1年間を無駄にせずに過ごしたということである。英語の勉強はもちろんのこと、アメリカ経済のこと、勤務先での仕事に関する知識をいろいろ仕入れていた。
勤務先としては、1年間何をしてきたのかを報告させればいいだけではないか。そのうえで評価すればいい。このプロセスを踏んだのなら、倍返しの罰則適用はありえない。むしろ昇格を早めることだってありえると思ってしまう。
政府の音頭もあり、企業は従業員の副業を認める方向に一歩を踏み出した。この制度がいい加減に運用されはしないかと懸念しているのだが、それはともかく、長期休暇とは「まとめて副業をする」ようなものである。どこがいけないのか理解できない。その副業が本業に関係するものなら、勤務時間外の勉強会と同様、大いに推奨される。
ということで、知り合いの夫が不利益を被りそうなことに、日本の働き方改革もその実は表面をつくろうだけなのかと感じてしまった。

2018/05/09


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