川北英隆のブログ

何がセクハラやパワハラか

何々ハラスメントという言葉をよく見かけるし、ハラスメントで辞職に追い込まれた役人もいたし、それをかばう暴言もあった。そもそも何がハラスメントになるのか。
ハラスメントに厳密な定義はない。定義は時代や場合によって変化するし、相手との相対的な関係にも左右される。もう少し付け加えれば、何がハラスメントになるかは、お互いの関係とそれに関する意識、社会や職場の慣行や常識によって異なると理解している。まずは、相手、職場、社会のことをよく理解しているかどうかが問われる。
社会環境によって左右される例は、長年人間をやってきたから様々経験している。
ネットのニュースを見ていると、某国営放送の朝の番組で「森繁久彌が女優のお尻をよく触ったとか」が話題になったそうだ。僕の経験でも、40年程前は職場で男子が女子のお尻を軽く触る(タッチする程度だろう)ことはよくあった。「男が女の・・」ではなく「男子が女子の・・」と表現したのは、当時のそんな行為に性の意識が希薄だったからである(そう理解している)。
森繁久彌がどうだったか直接知らないのでよく分からないが、そういう行為が一種のキャラになっていたのだろう。男尊女卑の風潮が残っていた社会では、「そういうキャラの男子」だと思ってもらえれば、女子に対するセクハラにならなかったようだ。
僕と同期の男子は、「今日、誰それさんのお尻を触ってやったら、イヤねと言いながらも喜んでた」とか語っていたものだ。それが許された明るいキャラの同期だった(根は暗い性格だったと思うが)。コミュニケーションというか、仕事をしてもらうための手段だったのだろう。念のために急いで付け加えると、僕はそういうキャラではなかった。
パワハラといえば、下っ端の書いた書類やレポートを上司が見て、いきなり破り捨てたり、ゴミ箱に放り込んだりすることもよくあったそうだ。僕が新入職員の頃には見かけなくなっていたが。その代わりに真っ赤に添削されて返ってくることがよくあった。僕の頃、上司の行為が親切になっていたのだろう。今では真っ赤な添削もパワハラになりかねないかも。泣かれるかもしれないので。
子供の頃に流行したテレビマンガ(アニメ)にスポーツ根性物が多かった。これも今の時代ではパワハラになりかねない。アニメではないが、スポーツの最中に水を飲んではいけないと教えられた。大学時代の山登りでもそうだった。今では水分を取らないと熱中症になるとされる。指導者が確かな知識を持たないと、パワハラどころか立派な犯罪(過失)である。
相手との相対的な関係は最近の某役人の例で見られる。つまり、立場を利用して故意にハラスメントを犯したのかもしれない。そもそも、職場以外の場で(多分一対一で)会食をして、報道されたような発言を何度も繰り返すのはセクハラと(相手の弱い立場を利用した)パワハラとの合わせ技だろう。逆にお互いに好意を持っていれば、セクハラになるなんてありえないし、多分某役人の言動も違ったものになっていただろう。
そういうハラスメント対策には録音が最善だろう。今では相手の発言を録音するのはいとも簡単である。裁判での証拠となる。むしろ証拠がなければ、ハラスメントを受けた側が負けてしまいかねない。
ハラスメントになりかねない立場におかれた場合、相手の録音を想定して対応すべきである(言動を行うべきである)である。相手が何となく嫌がっているとの印象を受けたのなら、深入りしない(学生への指導の場合で言えば、こちらも時間にかぎりがあることだし、適当なところまでにしておく)のがいいと思う。寂しいことではあるが、これが対人関係が希薄になってきた今の日本の常識だと思っている。

2018/05/22


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