川北英隆のブログ

ふるさと活性には東京増税を

ある雑誌に「東京増税」を書いた。東京に事業所を置く企業に対し、税率を上げる。それによって増えた税収を地方に配分する。これが本来の「ふるさと納税」だろうと考えている。
ある雑誌とは、「不動産経済ファンドレビュー 9月15日号」である。提案は、その雑誌の巻頭「企業は地方に移転せよ」である。
企業が集中し、さらに人口も集中するのが今の東京圏の姿である。それによって歪とストレスが生じている。そんな東京圏で活動する企業への税率を上げ、増えた税額を地方減税に使う。トータルとしての税収額は変わらない。そういう発想である。
大都市圏での通勤時間という無駄な時間を日本人の多くが費やしている。これでは日本全体の生産性が上がらない。東京圏の地代が高いため、普通のサラリーマンではいくら稼いでも、狭い家にしか住めない。小さな子供を育てる環境も劣悪であり、女性が働くためには、保育所や学校への送り迎えという、さらに余計な時間がかかる。田舎に残された爺さんや婆さんを活用できないし、孫の世話という楽しみも与えられない。さらに、関東地区を大きな地震が襲えば、日本経済が壊滅的になりかねない。すぐに思いつくのは以上のようなところだ。
企業にとっても、東京に事業所を集中させる意味に乏しい。東京を半分無視しつつも堂々と、むしろ東京圏の企業以上に発展している企業も多くなった。その代表が京都企業である。少し目を転じると、アメリカでニューヨークの企業がどれだけ発展しているのだろうか。発展しているのはサンフランシスコであり、さらに田舎である。
東京の重要性の低下の要因は、1つに、日本企業の活躍の場が国内ではなく海外に移ったことにある。いわゆる経済のグローバル化である。もう1つは、インターネットの発達である。東京にいなくても、取引先と直接対面しなくても、ネットを使えば相手の顔を見ながら仕事をこなすことができる。さらに国内の交通に関して、無駄だと言われながらも新幹線が発達してきたし、地方空港がたくさんできた。そのおかげで、直接会おうと思えば、そんなに難しくない。
こんな時代に東京に移り、そこを動かないのは、流行に流され何も考えていない企業か、政府と密接にコンタクトを取る必要のある、規制に守られた企業である。そう考えたくなる。
企業として地方に移れば、社員のモラルアップになり、生産性を高められる。子守という高齢者の活用にもなる。以上から、本当の意味での働き方改革になる。要するに、最初に示した東京圏のデメリットの逆をイメージすればいい。政府としても、新幹線網を含め、交通インフラを整備する真のチャンスが得られる。結果として地方が活性化し、子供を育てるのが容易になれば、少子化対策にもなる。
もちろん、急激に「東京から地方へ」には無理がある。今現在において東京に重心がある企業も、今日明日に地方に移るわけにいかない。しかし、政策として地方移転を促進するのが客観的にいいわけだから、東京圏での増税のスケジュールを示し、実際のところも段階的に東京圏の税率を上げていけばいい。
私鉄や不動産会社には反対するところもあるだろう。でも、これらの業界にとっても、「東京から地方へ」がどこまで不利益だろうか。才覚さえあるのなら、新たなビジネスチャンスが生まれる。もちろん、高い税金を払ってでも東京で事業をしたい企業が相当残るだろうが、それは勝手である。
何故、こんな簡単な政策を政府が打ち出さず、「ふるさと納税」という小手先の政策なのか。発想の転換ができていないのか、大きな混乱を生み出したくないだけだろう。それとも大企業に媚びているだけかも。
以上は、35年来の友人とワインを優雅?に酌み交わしながら意見の一致をみた議論である。その友人、東京で事業を起こしているのだが、飲んだ勢いかどうかはともかく、本気に同意してくれた。重税が実現した場合にはどうするのだろかと、ほんの少し心配してしまったが。

2018/09/22


トップへ戻る