川北英隆のブログ

タワーマンションの長短

今年は強い台風が日本を何個も訪問した。観光で日本がブームなのか。大きな地震も起きた。どんな観光客が来たのかと、地下のナマズが顔を出したのかもしれない。そんな雑談の中、高層ビルのオフィスが台風で長時間揺れ、気分の悪くなった社員が多かったとの話を聞いた。
友人Oがタワーマンションの真中付近の階に住んでいた。2000年頃、日本経済が絶不況の時に建ったマンションで、それでも入居希望社多数の中、抽選に当たったとか。
そのマンションは免震構造で、真中付近が一番揺れる設計になっているらしい。風が少し強いと揺れたとか。風呂に水を張ると、揺れがよく分かるとのこと。
ちなみに、Oはカミさんを見つけ、子供ができた。子供の教育と心身の健康を考えると、タワーマンション暮らしは良くないと判断し、郊外の戸建てに移った。
そのOと、台風で高層ビルが揺れたと話していたら、「ドイツかフランスか忘れたが、タワーマンションが禁止になっている」と語っていた。体に悪いという理由だとか。
ネットで見るかぎり、「流産が多い」とある。これに対して、建設関係者だと思うが、「サンプル数が少なすぎで信頼できない」との反論もある。その中で1つ、信頼できる調査があり、イギリスでは景観やコミュニケーションの観点から、高層住宅が取り壊され、昔の町を取り戻そうとの動きが強いとのことだった。
http://www.kansai-u.ac.jp/ordist/ksdp/danchi/vol_S02.pdf
高層住宅に対する評価は国によるだろう。地震や台風の強風がない国では(ヨーロッパやアメリカ東部が典型)、高層ビルの短所は少なくなる。それでも、イギリスのように、景観を最重要視する動きがある。感じるところ、ヨーロッパ全体において、景観は無視できないようだ。都市計画があるということだろう。日本のように(アジア全体にそうだが)、無秩序にと思えるくらいに高層ビルを建てていいわけでない。
日本の場合、地震や台風が多いのにオフィスだけでなく、タワーマンションも乱立している。揺れだけではなく、停電時、断水時、大規模修繕など、タワーマンションには業者が語らない問題があるようだ。極端な表現を用いると、業者は売れればいいだけである。居住した後の問題には関心がない。行政が説明しろと指示する以上のことは語らない。
オフィスでも、低層階に役員室を持ちたいとの動きがあるとか。タワーマンションと同じ停電時、断水時の問題以外に、テロや火災などの危機対応を想定すると、高層階すなわち天守で得られる殿様気分の長所は消滅してしまう。
「残念ながら東京や大阪には土地がないので、高層ビルを建てざるをえない」との理由もあるだろう。この点には反論がある。「地方に移住すれば、好きなだけ土地がある」と。
少し指摘したが、日本の行政は場当たり的である。問題が顕在化しないかぎり動かない。高層ビルの例で言うと、景観も含め、都市計画をどうするのか、その意識が皆無に近い。
Oが講義と遊びを兼ねて京都に来て、「残念や」と語ったことがある。「かつての都、京都の景観が一部にしか残っていないから」と。木造なのか、石もしくはレンガ造りなのかの差はあるだろうが、ヨーロッパの景観からすると、確かに京都は残念である。東京には、その残念のかけらさえもない(ちょっと言い過ぎかな)。

2018/10/07


トップへ戻る