川北英隆のブログ

中間決算の増益率に関して

今日の日経朝刊3面に、「業績 際立つ二極化」とあった。業種別に、電機、通信の増益率が大きいのは、増益率はともかく、理解できる。一方、時価総額規模別に、2兆円以上の企業の増益率が前年同期比41%とあったのには違和感があった。そこで、内容を調べてみた。
日経を購読していない読者のために補足しておくと、時価総額の小さな企業、小売、電力ガスなどは減益であるため、冒頭の大規模、業種との差異が目立つとの見出しである。
新聞で使っている利益とは当期純利益である。本来的には営業利益で観察するのが正当である。もう1点気になったのが、ソフトバンクの影響が大きいことである。
計算してみると、時価総額2兆円以上の企業数は9月末でとったところ、49社になった。新聞では46社とあるので、その後の市場全体の値下がりを考えると、ほぼもれなく取れている。
ところが、時価総額2兆円以上の企業の当期純利益の増益率(前年同期比、以下同じ)は22%だった。データベースからダウンロードしたので間違いはないはず。データ取得方法に間違いがあるかもと思い、主要な企業を何社かチェックしたが、データはちゃんとダウンロードされていた。時間の無駄なので深くは追求しないことにした。
次にこの当期純利益からソフトバンクを覗いてみると、増益率は13%に大きく落ちた。やはりソフトバンクの影響が大きい。
本来の利益状態を見るため、時価総額2兆円以上の企業について営業利益での増益率を計算すると、13%だった。ソフトバンクを除くと、やはり大きく低下し、9%になる。この程度の増益率なら十分に納得できる。
最初に戻ると、新聞との当期純利益の差がどこから来るのか不明である。
もう1つ不思議なのは、新聞では、業種別に電機の増益率が91%とある。しかし、時価総額2兆円以上で、当期純利益の増益率が90%を超えている企業はない。最高がソニーの89%である。キーエンス、村田製作所は10パーセント台、日本電産31%、東京エレクトロンが49%、京セラが28%である。
時価総額2兆円以上の企業で増益が目立つのは、以上で挙げた他は、医薬品、信越化学、コマツ、資源高で潤った大手商社、石油(調べていないが多分在庫の評価益)、鉄鋼、不動産といったところか。
いずれにしても、今日の日経の記事の増益率は誇張されている。以上、「記事の内容には要注意」というメモ書きである。
追記:忘れかけていたが、電機の当期純利益に関しては東芝の影響が大きい。

2018/11/10


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