川北英隆のブログ

日本植物燃料の合田氏

京都大学で日本植物燃料の合田氏に講義をしてもらった。農林中金バリューインベストメンツによる寄付講義の一環である。日本植物燃料って、アフリカ、モザンビークで地域住民のために事業展開している会社である。アフリカが舞台だけに非常に興味深かった。
僕自身、日本植物燃料はもちろん、それを立ち上げた合田氏を知らなかった。京大法学部で学生を6年間やり、探検部に所属し、紆余曲折があって日本植物燃料を立ち上げたとのこと。
講義の最初にいつも登壇者を紹介している。今回も事前にもらっていた資料をパラパラと見て、「他人とはまったく違う発想と行動で生きてきた人物」と思い、「農林中金バリューインベストメンツの奥野氏も僕も京大の卒業であり、他人と違う発想ができることを少し自慢の種に思っていたが、本日の合田氏と比べると我々は普通人」と紹介した。
その合田氏、国際会議で自己紹介する時に「私はチーズ」と言うとか。つまり、ゴーダチーズである。そういう名字は羨ましいと、いつも思う。僕の「川北」も「英隆」も重すぎて、いまだに洒落を思いついていない。多分、墓に入ってからも、時々思案するだろう。
合田氏の基本理念は、「地域を豊かにすることで、企業も豊かになること」だという。事業のためにアフリカを選んだ理由は、日本的要素が多少なりともあるアジアではなく、まったく異質な社会であるアフリカに魅力があったことと、事業の基本である人件費の安さだという(搾取しようというわけではなく、日本円の価値が高かったことだと僕なりに解釈している)。アフリカの中のモザンビークはたまたまらしい。
そのモザンビークで、農業活動の支援というか、農業システムを作り上げ、マネー経済のためにキャッシュレスのシステムを作り上げてきたという。今では、アフリカ経済をいかに離陸させるのかテーマにした、政府もしくは国際会議に引っ張り込まれているらしい。
一番印象に残ったのは、日本の文化とアフリカというかモザンビークの文化の差である。銀行がないから(日本がイメージする銀行網は、電力が安定供給され、本支店間の通信システムがないと成立しない)、現地ではタンス預金ならぬ(地中に埋めた)壺預金が重要である。
でも、現金を持っていると、表面的には自然と目減りしていく。日本植物燃料の取引システムの中で(現地の支店で)現金が消えると、関係者は「敵意を持つ者が黒呪術師を雇い、妖精に命じて現金を消した」、「それに対抗するには白呪術師を雇うのがいい」と説明したとか。
そんな文化にいちいち目くじらを立てても仕方ない。そこで、日本植物燃料はキャッシュレスのシステムを作り上げた。自然と目減りする現金が不要である。このシステムが現地で普及しているらしい。今後は日本の農協的なシステムを現地で普及させたいとか。
こういうような、現実を理解した上で行動する日本人がいたのかと感動した。政府が陥りがちな「口ばかり政策」とは雲泥の差である。

2019/07/04


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