川北英隆のブログ

すてきナイスの不好と不幸

すてきナイスグループって知っているだろうか。関西人ならほぼ100%知らないだろう。僕でさえ知らなかったから。というのも、証券アナリストとして、すてきナイスグループを調べたことがあったのに。
すてきナイスグループ、関東人なら少しは知っているだろうか。マンションや戸建住宅の会社だから。それにしても安っぽい会社名である。経営センスの問題かもしれない。
このすてきナイスグループ、実質的な経営トップが会計操作をし、虚偽の決算数字を開示していたらしい。この容疑で逮捕されている。というか、その逮捕をきっかけにいろんな虚偽の数値が発覚した。本日、日本取引所自主規制法人の審査結果に基づき、東京証券取引所はすてきナイスグループを特設注意市場銘柄に指定した。
それで、僕として、すてきナイスグループとどのような関わりがあったのか。
実はその沿革に関する資料を見せられ、「あの会社がこんな名前と姿に」と知った次第である。元の会社名を日栄不動産という。僕が調べた当時、1980年代前半は日栄住宅資材だったようだ。
その日栄住宅資材、どういう経緯で調べたのか忘れたが、保険の営業から「株式を買ってくれ」との依頼を受けたのだろう。どう結論したのかも忘れているが、当時の業績は今ほど酷くないはずだし(酷ければ、それはそれで覚えている)、ボーダーではなかっただろうか。「買っていいよ」と結論した可能性もある。
日栄住宅資材、さらに遡れば市売木材という会社名だった。1950年に設立とある。1962年に上場している。僕が知るかぎり、戦後の材木業者は金持ちだった。物が不足する時代に住宅用の木材を扱うなんて、並の資金力であればできるはずもない。実家の近くにあった材木店も大金持ちだったと聞いていた。
今でも、すてきナイスグループは材木の取り扱いで最大手だとか。つまり名門である。今回逮捕されたトップは、実は二代目だとか。「ふーむ」である。
業績を見ればすぐわかるように、売上高は2000億円を超える大企業である。でも、利益は数億円しかなく、虚偽の利益を修正すると赤字かわずかな黒字という状況である。
データに基づき、30年近く(つまり1990年まで)遡ってみたところ、売上高の規模は今と変化なしの2000億円台。当時の利益は数十億円の規模だったのに(つまり普通の企業だったのに)、その後ジリジリと、今の貧弱な状態に落ち込んでいる。
戦後の金持ちが住宅事業に手を出したのだが、経営のセンスに乏しく、蓄えた資産を食いつぶしていく。そんな構図だろうか。そこで止めとけばよかったのに(いつ先代から今の二代目に経営をバトンタッチしたのかは調べていない)、二代目が名門の意地から無理をして虚偽の売上など、会計不正に手を染め、何とか黒字維持に見せかけた。それについて誰も、「殿、ご乱心を」とは止めようとしなかった。
このグループを笑ってはいられないのが今の日本の大企業だろう。程度の差はあれ、同じような姿が、最近でもいくつもある。無理な多角化は鬼門、アーメン(鬼門だから南無阿弥陀仏か)である。

2019/09/19


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