川北英隆のブログ

日本は低所得者の国か

本日の日経のネット記事の見出しが衝撃的だ。「年収1400万円は低所得」とある。これは同日の新聞1面左のコラム「安い日本」の小見出しでもある。
その新聞記事によると、アメリカのカリフォルニア州では年収1400万円の4人家族を低所得に分類しているとか。とすれば、日本は低所得者の塊になる。本当に日本の国民は貧乏になったのか。
実は僕も「日本人の生活が貧しくなってきた」と感じている。
最近知った卑近な事例を挙げる。親の遺産で株主になっている某社から送られてきた2020年のカレンダーである。カミさんがふとメットで見たところ、メルカリにたくさん陳列されているとか。確かにそうだった。「そこまでするんかい」、「不要なら知り合いにやればええやん」と思った。実際、わが家のそのカレンダーだが、カミさんが取り上げ、近所にやってしまった。ちょっと趣旨が違うか。
いずれにせよ、メルカリの事業とは日本のような貧乏になった国でこそ育ったのかなと、思ってしまった。
日本の1人当たり国民所得を調べてみた。2017年のデータがあった。そこで気づいたことが2つある。
1つは、日本は3.96万ドル、つまり430万円くらいある。ざっと各国を眺めたところ、そんなに低くはない、アジアの中では高い。当然だろうが。
2つは、とはいえ、ヨーロッパに目を転じると、もはや中位クラスに近い。
そこで順番付しているサイトがないかと調べた。それによると日本は29位となっている。かつて、記憶では10位以内のこともあったし、少なくとも今でも20位以内だろうと思っていたのだが。
各国の水準を記しておく(以下、万ドル単位)。基準となるアメリカは6.12である。アジアではシンガポール5.47、香港4.83と日本を上回り、韓国が3.00と接近している。台湾2.51である。ヨーロッパでは、ドイツ4.59と日本より上、フランス3.94,イギリス3.91がほぼ同じ、イタリア3.29、スペイン2.83である。
つまり、アジアが豊かになり、かつて世界を席巻したヨーロッパの大国の多くが、日本と同様、アジアの新興国に追いつかれつつある。沈みゆく大国と言えるかもしれない。
でも、これだけでは日本の生活が貧しくなったとの実感を十分に説明できない。ありうる説明は、日本の所得格差が少ないという事実である。
最近でこそベンチャー企業の上場が簡単になり、大金持ちが出現している。とはいえ、それでも極端な金持ちは海外と比較して少ない。平等という意味で日本は稀な国だろう。優しい国である。
「悪平等」という見方もあろう。これも最近の日経がさかんに書いていることだが、日本の企業は従業員の能力をあまり評価しない。能力に応じた給与を支払わないから、有能な者ほど外資系企業に引き抜かれる。日本の企業は周回遅れの雇用体制に陥っているのだろうか。今では優秀なものほど、就活の対象を外資系にしている。これもどうかとは思うのだが、処遇のことを考えると仕方ないだろう。
もしかして、従業員の能力を評価する能力が日本企業に欠如しているのではないか。能力の評価はともかく、日本企業は、過去の成功体験から脱出できない。また、他社がある事業で成功すると、その事業に群がり過当競争を繰り広げる。下手なサッカーでしかない。
これでは儲かるはずがないし、人材の無駄遣いである。儲からないから、結局は大した給与も払えず、日本全体の地位を低下させているのではなかろうか。
以上、感じたままにメモしたまでである。

2019/12/12


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