川北英隆のブログ

日本株のグローバルな位置

株式に投資する場合、必要なのはグローバルな視点である。企業が国際的に活躍している。投資家も、先進国の株式であれば安い手数料で売買できる。しかも、日本の経済力と成長力が圧倒的ではない。どう考えてもグローバルな株式投資が重要となる。
1989年12月末にピークを付けた日本の株式は、その後12年少しの間、長い調整に入った。2003年に調整を終えたものの、2008年にはリーマンショックの影響を受けた。ようやく2012年末以降、本格的な上昇過程に入ったようだ。
残念なのは、とくに投資信託や証券会社が株式市場に対してグローバルな視点を軽視してきたことである。自分達が得意とする日本株こそ「the株式市場」と言わんばかりだった。ここ数年、ようやくグローバルな市場に軸足を移しつつあるようなのだが。
多くの年金ファンドもグローバルな視点を欠いてきた。株式を国内と海外に分けていることと、「国内株保有額が海外株保有額よりも多いか同じ」という制約をポートフォリオに課していることである。
前者に関して、日本経済を支える自動車産業の売上高の過半が、国内ではなく海外であることを思い出せばいい。電子部品も同じである。後者に関して、日本の経済規模(国内総生産=GDP)が全世界の10%を割っていることと、成長率においてアメリカの方が日本よりも高いことを例示しておけばいいだろう。これだけでも、日本株ではなく、グローバルな視点で株式に投資するのが正しいと理解できるはずだ。
もっとも、「理解できない、そうはいっても・・」との声もあるだろう。そこで各国の主要な株価指数の推移を示しておきたい。
まず、1990年年初から2019年年末までの30年間について、1990年年初(正確には1989年年末)を100として30年後の株価の水準を計算した。
日本:東証株価指数=TOPIX 60.2、日経平均株価 61.3
アメリカ:S&P500(ドル)916.8、S&P500(円)699.8
ドイツも計算したかったのだが、あいにく手元に25年間強のデータしかなかったので止めた。25年間のデータを見る限り、結果に大差ないはずである。
この期間には、日本のバブル崩壊後の12年間強が含まれる。日本が残念な結果なのは仕方ない。
それでは、2000年以降の20年間だとどうなるのか。2000年前後にはアメリカを中心としてIT株(情報通信株)のバブル崩壊もあり、日本と欧米の条件は対等に近い。結果は次のとおりである。
日本:東証株価指数=TOPIX 100.6、日経平均株価 125.9
アメリカ:S&P500(ドル)220.5、S&P500(円)236.3
ドイツ:DAX 191.7
1990年以降の30年間ほどではないものの、やはり日本株の上昇率が劣位にある。日本の投資家として一番重要な円ベースでも同じというか、より海外株の方が良くなる。というのも、円がドルやユーロに対して安くなったからである。
企業を225社に絞っている日経平均でさえそうである。日経平均の場合、2000年4月にIT企業にウェイトを移しすぎ、そのため指数水準が急落するという事件があった。とはいえ、その影響を除外しても大差ないだろう。
それではアメリカやドイツ以外の株式に投資すればどうだったのか。クローバル投資でもっともよく用いられるMSCI社の株価指数を用い、各国の代表的な企業への投資を想定した。結果はどうか。円ベースで見て、この20年間で一番パフォーマンスが良かったのはアメリカ株(S&P500)だった。
上昇率だけで見ると、新興国がアメリカ株よりも少しだけ高いのだが、リーマンショックによって急落した後、現在も当時の高値を抜けていない。いずれにしても乱高下しすぎるため、個人が近寄るべきではないだろう。実は僕もリーマンショックによって大失敗した。
以上は今後を保証するものではない。とはいえ、日本経済と海外経済とを客観的に比較するのなら、海外に投資するのがいい。日本株に投資するのなら海外で活躍できる企業がいい。そういう推論になってしまう。
以上、別に日本が嫌いなわけではない(「日本嫌い」だと誤解している向きもあるので困っている)。投資で儲けるには冷徹な分析と判断が求められる。情に流されてはいけない。

2020/01/02


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