川北英隆のブログ

コロナちゃんの恵みのお水取り

先日、知り合いの弁護士が東京からやってきた。京都大学の法学部を見たいとか、変わったリクエストだった。「東京大学の卒業だから、さもありなんかな」と研究室で会った。
その弁護士TI氏と会ったのは非常に久しぶりだった。20年近く会っていないかもしれない。そんなことはこの世界では珍しくないので、研究室で「日本では法分野をはじめ、数値に基づく実証分析が少ない」とか、もっともらしい議論になった。TI氏はもう一人、友人で鉄鋼メーカーに勤めていた理系出身者と一緒に来たこともあり、ここで書いたような話にしたのだろうか。
話しが一段落した後、「今回はどこに行ったの」と話題を変えたところ、「奈良」との返事だった。ここでもまた、「奈良を観光しているとギリシャなどの文化が日本に行き着いたことがわかって興味深かった」、「でも、日本は文化すなわち情報を受け入れるだけで、どこにも発信していない」、「(僕の言葉で言い直せば)文化の終着駅であり、始発駅はもちろん、中継地でもない」との、えらく高尚めいた議論になった。
「ええっ」と思っていると、最後になって「今回、お水取りに行ったところ、えらく空いていた」との最新情報を伝えてくれた。「もちろん人はいるのだが、観光客が少なく、地元の人も少ないのだろう」、「だから押し合いへし合いではなく、ゆったりと見られた」とのことだった。
「じゃあ、今年がチャンス」と、昨日にお水取りを見学に出かけた。
確かに人出が少ない。行きは駅からタクシーに乗ったのだが、「普段の年は大仏前までは入れず、博物館の手前で一般車両は通行止め」とタクシーの運転手が教えてくれた。
大仏殿でタクシーを降り、ひもじそうなシカの横を通り、東大寺の二月堂に入った。やはり人が少なく、すんなりと「まあまあの場所」に立つことができた。6時半前だったと思う。
7時にお水取り最大のイベント、全部で10本の松明が二月堂の廊下を走るイベントの開始となる(3月1日から12日までが通常バージョン、13日がクライマックス、14日は別の趣向)。当日は、1本ずつ、西側の石段から松明が上がってきて、二月堂の廊下の西側で一旦停止、その後で廊下を東に走り、そこで松明を燃え尽きさせる。
松明が終わってみると、ススというか松明の灰が髪や服にいっぱいだった。これでコロナちゃんの厄除けができたのではと思ってしまう。観光客が少ないというコロナちゃんの恵みのおかげで、奈良出身ながら、これまだ行けなかったお水取りを見られた。
それで、情報の終着駅になってはいけないと思い、このブログで次に発信しておく。通常の松明のイベントは明日と明後日の2回、その後は13日の最大イベントを含めてさらに2回残っている。
写真は1本の松明が廊下の西で火をかざしているシーンである。
20200310お水取り.jpg

2020/03/10


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