川北英隆のブログ

バラマキ10万円は死に金

国が全国民に10万円くれるらしい。それと「布製安倍高級マスク」2枚と。どれだけ役に立つのか。死に金、せいぜいのところ中途半端と言うべきだろう。
10万円を全国民に配ると12兆円である。でも一人にとってみれば、10万円は10万円でしかなく、3人家族で30万円である。金持ちにとってみれば、「ほな、これを軍資金に今日は新地のバーに行こか」、「銀座に繰り出そう」程度だろう。他方の困っている者にとっては、「ないよりはまし」ながら、焼け石に水だろう。
要するに、この10万円、政府や公明党の人気取りであり、税金を使った体の良い国民買収大作戦と思えてならない。
こんなことしかできない裏にあるのは、日本の徴税システムの不備である。誰がどれだけの所得を得ているのか、確信ある捕捉ができていないという欠陥である。だから、コロナの問題で本当に困っているのが誰かを特定できない。
サラリーマンは完全とは言わないまでも、ほぼ100%捕捉されている。それに対して個人事業主や農家の所得は捕捉できていない。昔からある二重帳簿、三重帳簿が大手を振っていて、表の帳簿に基づいて確定申告するものだから、ごまかし放題である。当然、税務当局もその手口を十二分に認識していて、調査に入っているが、効果はその時だけ、結局はもぐら叩きが続く。
このブログで以前から、京都の文化はキャッシュレスではなく現金主義と書いている。その心はというと、京都こそ、坊さんに見習い、極力税金を少なくしたい文化だということ。宗教活動に税金はかからないが、その他の副収入も現金にしておけば、税務当局に捕捉されず、ほぼ無税で済む。現金の出入りに証拠が残らない(残りにくい)からである。
おかげで、10万円では足りないと弱者が叫んでも、「本当に弱者かいな」と政府が疑う。そこで「弱者の証拠を見せい」と言うわけだが、弱者が提出する証拠書類に信憑性が乏しいから、補足資料を付けなければならず・・という羽目になり、手間暇だけかかる。
こんな貧弱な徴税システムになったのも、政治が票のため、中小業者、個人事業主に媚を売ってきたからである。「個人番号カード」の制度を導入する時が、徴税システムを完璧に近づけるチャンスだった。しかし、当然のごとく票のために骨抜きにされ、中途半端で終わっている。
多分、金持ちの中小業者、個人事業主がいて、「所得はもちろんのこと相続税の申告の時に全財産を捕捉される、そんな危険なことを許してはならじ」と感じ、表でも裏でも動いたのだろう。そもそも日本の国民性として、京都が典型的なように、「ほんまのとこ、お上は嫌いや、何するのかわからへんし」、「そんなお上に税金をたっぷり払うてどうするねん」という不信感が強いのかもしれない。
以上が、12兆円もの貴重な税金のバラマキ大作戦の裏事情である。中小業者、個人事業主にとってみれば、仲間の誰かが所得や相続財産の捕捉を免れてきたため、その被害を全中小業者、全個人事業主が受けたことになる。
労働者のことを書けなくなったが、こちらは10万円ではなく、失業保険の充実で対処すればいい。緊急事態なのだから、失業手当を支給する要件や手続きの緩和である。
僕は受けたことがないのでよく分からないものの、知人から聞くとかなり面倒らしいので。知人、定年退職後の申請だったらしいから、「どうせ手当だけ欲しさの申請やろ、働くつもりはほぼなし」と厳しかったのかもしれないが。

2020/04/17


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