川北英隆のブログ

ドルは強いのか弱いのか

ロイターのネットニュースの見出しを眺めていると、知り合いのエコノミストがコラムを書いていた。ドルという為替レートについてである。「ドルは底堅く推移する公算が大きい」と。「根源的理由をまだ詰め切れていない」らしいが。
ドルが強いのは、グローバルな通貨としての地位を固守しているからである。
グローバルに通用し信頼できる通貨としての今のドルの地位にとって、ライバルはどこか。候補として、ユーロ、元、そしてついでに円を挙げておこうか。ビッドコインのような暗号資産(以前まで仮想通貨と称されていたやつ)を挙げたいという向きもあろう。
これらのライバルだが、それぞれ重大な欠陥を有している。
まずユーロ。いつ崩壊しても不思議ではない。南と北とではあまりにも国民性が異なる。国民性として南欧に親しみを感じるが、経済的にはいい加減であり、物価は依然として安い。地下経済も壊滅的ではないようだ。
北欧はそんな南欧を腹立たしく思っているのだろうが、如何ともしがたい。南欧をユーロから追放する非常手段もありうるが、ユーロ圏を拡大し、域内経済の力を伸ばすというそもそもの理念の1つに反する。同じことだが、ドイツやフランスが自国通貨をグローバルな通貨にしようといくら頑張ったところで、力不足は否めない。
いい忘れていたが、ITやAIなどの先端的技術力でもユーロ圏は見劣りする。この点でも、将来ユーロ圏が世界経済の頂点に立つとの見通しは成り立たない。
次に中国。経済力はあるし、ITやAIなどの先端的技術力の発展でも目覚ましいものがある。しかし、人権の確立、地域間の格差、情報の開放などの観点から、世界に信頼されていない。
これらの不安材料の究極の姿として、元の価値が強制的に引き下げられる(元を持っていると財産的価値が大きく損なわれる)可能性がゼロでないというのが、グローバルな通貨になるための一番大きな障害か。アフリカなどの弱者を資金力に物を言わせて味方に付けてきたのだが、先進国に信頼されないようでは、元がグローバルな通貨になるのはまだまだ先である。
暗号資産は、発展途上国と投機家とお金の遊び人とを除くと、誰も相手にしていない。先進国が「通貨」として認めていないからだ。紙に刷った100万円札と同様、1ビットコインそれ自身に何の値打ちもない。電気を大量に使ってビットコインを製造(マイニング)していると言われても、大量の労働者と機械を使って穴を掘りまくり、その1つの穴を1ピット(pit)コインだと言われるようなものでしかない。
1万円紙幣に価値があるのは、信頼に足る政府が「1万円の価値がある」と強制力をもたせるからである。政府の信任を勝ち取れないようでは、貨幣として通用しない。
最後に円である。かつて、というか1980年代の後半だが、円がドルの地位を脅かしたこともある。でも、それはバブルであり、うたかたの夢と消えた。その後、円は浮かび上がっていない。今回のコロナの問題においても、先進各国と比べ、日本の対応の後進性が目立つ。検査1つをとっても、国民を満足させられないようでは、ドルのライバルにはなりえない。
ということで、知人と同様、ドルのライバルはいないと結論する。
また、ドルの価値だが、アメリカという国、チャランポランさが目立つものの、コロナ問題に象徴されるいざという場合の(第2次世界大戦時もそうだったが)対応の速さと底力からして、侮ってはいけない。ということで、僕にとってドルは、依然として信任に値する通貨である。
写真は、少し珍しい1ドルコインである。流通していたようで、汚れている。
20200503Oneドルコイン.jpg

2020/05/03


トップへ戻る