川北英隆のブログ

政府は危機対応モードか

コロナ危機は第二ステージに入った。海外では発展途上国で猛威を振るっている。日本での猛威は、従順な国民性もあって何とか食い止められているものの、まだまだ予断を許さない。しかも日本の場合、コロナ以外の関連する脅威にも十分な注意が必要である。
コロナについて、海外の感染ではロシア、中東、インド、南米、アフリカなどの急速な増加に注意を向けないといけない。劣悪な衛生状態が心配な国もある。欧米は経済活動の再開を急いでいるが、新規感染者数が減ったとはいえ、収束したとは決して言えない。これらの国との行き来が再開すれば、日本にコロナが再度輸入されかねない。
これに関連して、マスコミがあえて片隅でしか報じていないのが日本の財政問題である。先に成立した今年度の第一次補正予算では26兆円程度の国債が追加で発行され、今年度の合計発行額が58兆円になる(財投債12兆円、借換債108兆円を含まず)。今後、景気の悪化にともない、64兆円程度と見込んでいた税収が減るから、その穴を埋めるため、さらに追加での国債発行に迫られる。税収が10%減ると、6兆円の国債追加発行となる。これに加え、現在検討中の第二次補正予算の財源として、10兆円規模での国債も発行されるだろう。
現在、日本国の借金は名目GDP(国内総生産)の2倍を超えている。2019年の名目GDPが554兆円だから、今年度に積み増されるだろう国債発行額は、その10%を優に上回る。
これは本来なら危機的状態と言うべきなのだが、欧米各国とも大量の国債を発行している。このため、日本があまり目立たない。しかも、中央銀行である日銀が政府と一体になり、国債を大量購入しているため、当面は凌げている。
問題はコロナに対する治療法とワクチンが開発され、先進国の経済が落ち着いたその先だろう。日本経済がアメリカ、ドイツ、中国に伍して回復プロセスに乗れるのかどうかである。また、輸出の回復が見込めるのかどうかでもある。
コロナに対する検査や医療体制の整備が遅れてしまった日本政府だけに、経済の回復も民間に多くを任せてしまい、コロナ後に備えたルールやインフラなどの基盤整備においても再度後手に回るのではと心配である。
とはいえ、これが最大の心配事ではない。より大きな心配は、南海トラフや関東の大地震だろう。政府は、とくに南海トラフに関して、国民に執拗なまでに警戒信号を発している。それにもかかわらず、政府自身は何も備えていないに近いのではないか。
たとえば、震災後の復興に膨大な資金が必要となり、またまた大量の国債を発行しなければならないはずである。当然、国内の生産体制が混乱をきたし、輸出も減る。この点をどこまで意識しているのか、非常に心もとない。
もしも政府が大地震を本気で心配しているのなら、一昨年や昨年のような税収の堅調なときに、それを貯金する(日本政府の場合は国債などの借金を余分に返済する)行動に出たはずである。当時、そういう素振りさえもなかった。
輸出が大きなダメージを受ければ、日本国全体の資金繰りについては、理論上、海外に頼ることになる。これに加え、これからの大量の国債発行により、日本政府の借金が名目GDPの3倍を越える、もしくはそれに接近するかもしれない。そうなれば、海外は日本の財政を危ぶみ、日本への資金供給に躊躇を示しかねない。
以上によって、円が売られる。輸入物価の上昇により、インフレになる。インフレになれば金利が上昇するか、少なくとも金利上昇懸念が高まり、円建て資産が売られる。金利が上昇すれば日本国債が売られ、政府の金利負担も徐々に重くなり、財政の一層の悪化要因になる。
というような、非常に暗いシナリオが見えてくる。
今、個人として、この暗いシナリオに備えておく必要性が高まっているのではなかろうか。このシナリオが動き始めたとき、今回の政府のコロナ対応から予想するに、「円資産を売らないように」、「我慢して耐え忍ぶのだ」と国民に協力を要請しつつ、日銀に円資産の全面買い支えを命じるだろう。そんなときに、「こりゃあかん」と円資産を売れば、円資産防衛隊に非国民と罵られるかもしれない。
個人としては、今のうちに円資産を外貨建資産に買えておくのが正しいように思う。通貨を分散して持つ投資スタンスでもある。問題は日本政府による資産の凍結だが、さすがにそこまで至らないと思う。そんなことをすれば、日本の信用度が完全に失墜してしまうことくらいは、政府が理解していると思うので。

2020/05/22


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