川北英隆のブログ

叔父の満中陰と農業

この日曜日、亡くなった義理の叔父の満中陰だった。正直なところ、出席をどうしようか少し迷ったが、コロナを振り切って出席した。葬儀はごく身内だけで行ったと聞いていた。だから、満中陰の知らせが来た時、「どうして」と思わなくもなかった。
政府が楽観的になっているので、満中陰を通常のとおり行ったのだろうか。それとも、一度は親戚に集まってもらいたいと考えたのか。この質問の機会はなかった。
奈良の満中陰は親戚だけで行う(他府県はほぼ知らない)。日曜日、集まった親戚の顔ぶれは全員ではなかったと思う。コロナはともかくとして、僕のように「葬儀を制限したのに、今回は何故」と考えた親戚もあったのだろう。
それはともかく、喪主(1回り下の寅の従兄弟)の挨拶には悲しさが少し表れていた。我々の世代が最前線に立ちつつあるから、その覚悟かもしれない。とはいえ、今回の場合、まだ叔母さん(1回り上の寅)が存命なので、半身での最前線なのだが。
その満中陰の後、奈良市内で会食となった。そこで失礼なことを質問してしまった。
というのも会食の前に、従兄弟の実家で某写真を見たからである。目的が不明なのだが、アイスランドからの10名くらいが叔父さんの家を訪ねたとかで、その時の写真が座敷に飾ってあった。写真には、叔父さんと叔母さんと、訪問した一団が写っているのだが、その中に黒いのが1人いる。最初、訪問団の中にインドネシア系もいたのだと思ったが、よく見ると従兄弟だった。
その記憶があったものだから、少し酔っていたこともあり、「何でそんなに顔が黒いの」と質問してしまった。答えは単純で、「農作業をしているから」だった。「足などは白い」とも説明してくれた。
その答えによって思考が飛んだ。親戚の相当数は農家をしているのだが、今のところ、叔父さんの代、もしく従兄弟の代で終わるのではないかと思った。
奈良盆地での農家だから、果物や野菜も作っている。農家として、それなりの収入がある。しかし、真っ黒に日焼けするまで働く価値があるのかどうか。後継者の候補は現実を見つつ、「普通のサラリーマンで十分」、「外観が変わるほど働く意味なし」と結論するのだろう。さらに、そんな農家に嫁ぐ嫁がいるのかどうかも大問題である。
この現実を見聞きするにつけ、日本の農業政策の無策を痛感する。農林水産省も農協も、現実を総合的に観察し、評価し、本気の政策なんて打ち出すはずがない。
農林水産省のキャリアにとっての最重要テーマは、配属された部署の数年をいかに出世のステップにするかである。つまり、数年間に関する思考でしかない。だから、農業の後継者問題や結婚問題なんて念頭にないか、あったとしても後回しなのだろう。一方の農協は、後継者問題とかいう儲けにならないことをやるはずもない。
哀れ農業である。
当日、久しぶりに数珠を使うものだから、少し探してしまった。
ゆく秋に ほこり払いて 念珠を出し

2020/10/27


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