川北英隆のブログ

日米株式の配当制度の大差

日本の株式の配当について。3月末決算企業の場合、典型的には3月末の株主名簿に記載されている株主に対し、株主総会で決まった配当金額を配当できる。
例外はありうるが、会社法上,事業年度の終了後3か月以内に株主総会の招集が求められる。ということで、3月末決算企業の株式に投資していると、気の抜けた頃、つまり6月が終わる頃に(場合によっては7月に入ってすぐに)配当金が支払われる。
ついでに株式投資の初心者向けに書いておくと、株主名簿に株主として記載される事務手続き上の最終日がある。手続きに2営業日が必要とされるため、2営業日前(前々営業日)までに株式を取得しなければならない。土日や祝祭日を挟めば、これらは営業日でないため、その分だけ前に株式を取得しなければならない。この実質的な最終日を「権利付き最終日」と呼び、その翌日を「権利落ち日」と呼ぶ。配当だけでなく、株式分割も同様である。権利落ちしてしまったのかどうかは重要である。
ではアメリカはどうなのか。足元の配当の例を示しておく。アップルの場合、4/28に次の発表があった。0.22ドル/株の配当を5/13に支払う、権利落ち日は5/7だと。マイクロソフトの場合、3/16に発表があり、0.56ドル/株の配当を6/10に支払う、権利落ち日は5/19だと。両社とも3,6,9、12月の四半期決算末の後に配当が支払われている。
なお、アップルの事業年度末は9月、マイクロソフトは6月である。また事業年度末だからといって権利落ち日や配当金の支払日が大きく遅くなるといった変動はないようだ。
さらには、アップルやマイクロソフトは、今のアマゾンやグーグル(アルファベット)と同様、多額の利益を計上していたにもかかわらず、無配の時期が長かった。
以上についてどう感じ、どう評価すればいいのか。
日本は事業年度末が同じであれば、ほぼ一律に配当関係のスケジュールが決まるので、投資家として考える必要がない。しかし窮屈である。ほぼ一斉に株主総会の招集通知が来て、その資料を参考に、議案に対する賛否を決めなければならない。プロの投資家の場合、たくさんの企業に投資しているので、議案に対する賛否を決めるだけで大変な作業量になる。株主総会も一斉に開催され、出席できる企業は限定される。
アメリカの場合、アップルとマイクロソフトの例で明らかなように、バラバラである。配当に対する方針も各社で異なる。いい加減と言えばいい加減である。投資家が注意深くなければ、権利落ち日を見逃してしまう。見逃しても、それに応じた株価が付くので、損はしないのだが。とはいえ配当を得たいと思っていたとすれば、そのチャンスを逃してしまう。
個人的な意見を述べておくと、アメリカのほうが合理的である。
投資家としても、投資するからには(買いでも売りでも)、その企業のことを調べなければならない。調べることの1つとして権利落ち日がある。当然、配当に関する情報もアメリカでは豊富である。証券会社のサイトに入れば(例えば、日本のネット証券のサイトにおいて)、配当情報が得られる。取引所(僕の場合はナスダック)のサイトでも得られる。
それに、株主総会ではなく、取締役会が配当を決議すればいいだけなので(その代わり、取締役の責任は大きいが)、いつでも配当ができる。だから日本では珍しい3ヶ月ごとの配当が一般的である。しかも、権利落ち日から配当支払いまでの日数が短い。
一言で表現すれば、考えて行動する国(アメリカ)と、国などに命令され、さらに他人の反応を気にしつつ行動する国、良く言えば協調性の高い、悪く言えば個性に乏しい国(日本)の差かもしれない。

2021/05/11


トップへ戻る