川北英隆のブログ

私のコロナはどこですか

日本の社会は「私は誰」状態であると、常々指摘してきた。「自分が私である」ことを証明するのがややこしい。場合によっては証明できない。だのに、いろんな場面で「自分が私である」ことの証明が求められる。コロナのワクチン接種も同じである。
京都市から、ワクチン接種の予約を開始したとの通知と予診票が届いた。ファイザー製だそうだ。連休前だったか、ワクチン接種券が届いていたので、これで一式が揃った。65歳以上だから「お先に、すんません」となる。
京都市の場合、かかりつけ医か、近くの病院や診療所での接種が原則ながら、集団接種会場も設けられるとある。もう少し書けば、かかりつけ医があるのならそこに予約の電話をしろとある。かかりつけ医がない場合、市に問い合わせることになる。接種に必要な物は、接種券、予診票、(あれば)お薬手帳、本人確認書類である。
ここで問題になるのは、まず「かかりつけ医」の定義である。定義とは大仰であるが、風邪などで時たま診てもらう町医者は、果たしてかかりつけ医なのだろうか。たぶん、老人の場合、「あの先生に風邪で診てもろてるさかい、電話してみよか」となるに違いない。老人でなくてもそうだろうが。
とすれば容易に想像できるように、今後、ワクチン接種対象年齢が拡大するとともに町医者の電話が大変なことになる。実はわが家の場合、正真正銘に近いかかりつけ医がある。そこから少し前に電話があり、「いついつに摂取できるので、どうされます」とのことだった。町医者から電話があったのは、ワクチン接種対象者のほうから電話されたら大変なことになる(がんがん電話が鳴ったら診察どころでなくなる)からだそうだ。
もう1つの問題は本人確認書類である。運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証などが記載されているが、顔写真のあるもの、ないものが並んでいる。どうするのだろうか。どうせ適当にチェックするし、「そうしたらええやん」との市からの指示なのだろう。
以上のワクチン接種から日本の行政の後進性が浮かんでくる。電子化に程遠い。だから、いろんな混乱がすでに生じている。
まず、誰がどのような職業に就いているのか、すべてを把握しろとは言わないまでも、少なくとも医師や看護師など、国家試験を受けさせ、免許を与えている職業については、その免許保有者の情報を電子化し、住所や連絡先を常に把握すべきである。免許を与えるのは重要な職業との認識があるからであり、そうだとすれば国の財産でもある。個人としてそこまで国に情報を把握されるのが嫌なら、免許を返上すればいいだけである。
次に、今まさに議論されていることだが、マイナンバーの活用範囲を広げるべきである。マイナンバーは国にとっての国民に関する情報である。逆に国民にとっては、マイナンバーは「自分が私である」ことの証明となる。10万円給付のような、ある意味マイナーな問題への対応からマイナンバーの見直しが進んでいるが、むしろ今回のワクチン接種のような重要な問題にも、マイナンバーを活用することで迅速、正確、かつ公平に対応できる。医療情報を電子化し、マイナンバーと組み合わせれば、誰を、どの順番で(年齢や基礎疾患などで)、どの場所で接種するのかを割り振ることが容易になる。混乱も生じない。
さらには連絡方法である。ネットが進んでいるから、それを使えば郵便は不要になり、紙資源が節約できる(郵貯の支援にはならないが)。当然、町医者に電話が殺到したり、医師から電話したりすることがなくなる。
以上の他、まだまだマイナンバーの活躍の機会が多い。一方、近々デジタル庁ができるとか。(私的な理由から電子化を拒む)既得権益に躊躇することなく、さらに何が多数の国民の利益になるのかを分析、把握し、マイナンバーのフル活用を目指して頑張ってもらいたいものだ。

2021/05/15


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